Intelligence game ”2nd try! ~journey to meet a japanese trout~”

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カルカッタコンクエスト 本流

待ちに待った、というべきか。もう来てしまった、そういうべきだろうか。

慌ただしさの中で3月になり、解禁を迎えた心地よい便りはSNSをはじめ、仲間からも増える一方で、まだまだ寒い日は続いているのだが、思わず頬も緩む。

自分の解禁日は2月に決まっていた、3月3日。ひな祭りに伊豆に向かう。
Angler Saito氏との初釣行である。

はやる気分を散り散りにさせたくて、高速でなく下道を選択、のんびりとハンドルを握る。

2時間ほど過ぎた頃には海が見えてきた、故郷である宮崎ではさんざん目に焼き付いた海だが、東京に来てからまともには見ていない、はじめての場所で見る海、視界には朝マズメを狙う堤防の釣り人、なぜか嬉しかった。

そして日が明け始める、驚いた。

夕日のような朝焼け、見たことのない陽の円であり円でないオレンジを中心とした色彩のグラデーションは、空の暗部とさかいもなく混ざり、照らされる雲の陰影はその足元にある海面に反射し伸びる陽の輝きと相まって、思わず「ちょ、ちょっと待ってよ」と口から洩れてしまっていた。

まったくの準備不足に不意を突かれた精神(こころ)が激しく打ちのめされる。普段なら写真でもと車を停めるのだが、動くことができず、頬をそのオレンジに撫でられるまま車を走らせるしかなかった。

少し夢見心地に、この景色を見ながら会社に急ぐであろう朝の運転手達と行き交いながら、しがらみのない土地で体感できることはこうも素直に受け止められるものか、そんなことに頭を巡らせていた。これも旅の出会いのひとつ、なのかもしれない。

ナビが山をのぼれと指示を出す。努力の声を絞り出すエンジンが踏み込む足に気を払っているその間に坂道は終わって、新たな驚きが顔を出す。

太陽が登る斜面とは真逆を降りるため、背にする陽のオレンジには山のカーテンが隙間なく閉められ、暗い。おまけに濃い霧まで登場して視界をさえぎり、ライトまで要求してくる始末。何なんだよ、いきなり、この差は。

陽から陰へ、これほど見事に体感させ揺さぶってくれるとは、運転席でひとり、2回も打ちのめされた。

狩野川 アマゴ

その後、目的地への途中に見え隠れする水の流れが、すでに打たれて鼻血よろしくコーナに腰掛ける心に、釣りという軽い止血をしてくれる。まだ、これからなのだ。

Saito氏とその知り合いであるH氏(と書かせていただく)とはコンビニで合流。H氏は今回初のトラウトだそうだ。挨拶もそこそこに地図を広げ、今日のプランに耳を傾ける。

ホームと言えるこの川の本流を攻める、まだ解禁直後なので目当てとなる天の娘達はどこで待っていてくれるのかわからない。探し出すためのRun&Gunだ、まさにベイトタックルでの釣り。今回3名ともベイトなのはトラウトでは珍しいが、そこには確固たる理由があって、そうしているのだ。

Saito氏の動画をご覧になられた方なら、彼はベイトタックルしか使わないと思うかもしれないが、そんなことはない。必要に応じてタックルは変える、それが彼のスタイルであり、愉しみでもあることは釣り人なら首を縦に振るしかない喜びだと想像できると思う。

本流 アマゴ 狩野川

日も高くなった8時半、先行者やその他の釣行者の姿も多い。そんな中で瀬をさくさくとキャストし、誘っていく。

すぐには結果も出ないもの、セオリーなら淵だけれど、探る釣りでは淡々と、楽しみながらアクションとコースを変えていくが、その合間には氏の動きに目を光らせてしまう。

本流 アマゴ 狩野川

まず、ポイントの選定からトレースコースの判断、立ち位置、移動全てが早い。それらを支えるキャスト精度は言わずもがな。おそらく釣りにおけるどの能力も自分の数倍だと見て取れる。それでも我々同行者がいるので遠慮してるのだろうけれど。

見落としそうになるが、同じコースに見えても変化させているのがわかる。それは泳層とラインメンディングや流れによるポイントへのアプローチだ・・・偶然じゃなくて、狙ってとか、悪い冗談かなと注視する。

思わず笑いそうになる精度、今の自分じゃ絶対無理ですと胸を張り、自信を持って言える。

これまでの釣り人生、上手な人と多く釣りをさせてもらってきたと自負している。しかし、またちょっと世界が違う感覚だ。

本流 アマゴ 狩野川

Saito氏、本来は右利きでバスフィッシングや他の釣りでは右投げとのこと、確かに同行したH氏にアドバイスする際、H氏の右利きタックルをそのまま使用していたが、あまりに違和感なく、話を聞くまで分からなかった。

この左右の使い分けにも氏ならではの明確な理由があり、聞けば確かにその通りだと納得するものだった・・・が、理由も含め氏のキャスティングについてはまた、別の機会に譲ってやってほしい。

この話を聞いた私は今日、思いがけずノーガードのまま3回もしたたかに打ちのめされ、ノックダウンほんの手前にいて、よろめいているのだ。

本流 アマゴ 狩野川

”成功は当事者にじっくり話を聞いてみると、そりゃ成功しますよね、としか言えない要素が見つかるものだ”

私の好きな言葉の意訳である、身も蓋もないけれど、真実だと思う。釣りに置き換えたなら

”釣れる人には、そりゃ釣れますよね、としか言えない要素があるものだ”

今季は250日フィールドに立つらしい、オフシーズンには体を作るためトレーニングをし、生態を学び、キャスト練習も欠かさない。これはほんの一端なのだが、私も、あなたも同じことができるのなら、同じようにコントロールすることができるだろう。ちょっとした狂気の沙汰だが、芸術は狂気がお供だし、釣りは芸術であると、かの開高大兄も書いているのだから、無理もないことかもしれない。私はそんな人が大好物な傍観者でもある。

この狂気を持って彼はこう言う

「僕にできることを、一生懸命やります」

本流 アマゴ 狩野川

それでいて、その瑣末で重要な技術と、トラウトを、自然を愛でる教養の世界を知っている。

散々投げて、移動して、そして迎えた今日のハイライトは尺超えの天魚だった。私は、ヒット前からカメラを回している。

「カメラ回してください」

そう言われたからだ、今日はじめて、指定された。半信半疑のままファインダーを覗き込み、姿勢を正す。

丁寧に狙う、その2投目が終わり、ルアーチェンジ、もう可能性はないと思っていた。

本流 アマゴ 狩野川

「ほら来たよ!でかいよ!」

そんな、出来過ぎだ。そう頭をかすめる自分が無知だった、経験、技術その他、何一つ敵う相手ではなかったはずだ。指示にも理由がなければそうしていないはずだ。

そして宣言通り、彼はその興奮を、狙いのまま優しく手にし、美しさに見惚れる。

カウントは不要、4回目となるボディブローは綺麗に打ち抜かれた。私は兜をぬぐ暇もなくリングに沈む。

本流 アマゴ 狩野川

本流 アマゴ 狩野川

ルアーは躍る春のチャート、ラインは河津桜のフューシャピンク、ランディングネットは銀化の多いこの川の娘達に似合うモノトーン、彩る道具もまた四季とトラウトへの想いが交錯する愉しみになる。

本流 アマゴ 狩野川

その1匹に敬意を払い、想像にほころぶ顔が現実のものとなる瞬間にその日の釣りは結実する。そう自分は信じているし、今日の釣りはそれが必然として生まれていた。

各々が持つ条件は違う、けれども魚を、自然を愛し、その土地、人、歴史を想い、その時できる最良の準備で各々の愉しみを最大化したいと思い、そう願う。

カップ麺だって、何だってあの場所で食べれば、美味しさ3倍増しなのだ。その幸せは自分以外の誰も奪えないのではないだろうか。

本流 アマゴ 狩野川

その釣り方が今日のパターンだった、その後尺は超えているだろう太い固体をまた掛けて、バラした。

聞けば、もう満足だったから、と。それが偽りでないことは、彼の立ち位置や合わせを見ていた自分がよく理解できた。

「たくさん釣らなくていいじゃないですか、次にまた」

本流 アマゴ 狩野川

帰りには食事に寄り、釣り談義、仕事話、馬鹿話。大声で笑い合う。

これもまた、堪らない最良の時間ではないだろうか。

 

今日はホームだが、今後初めて出会う流れに対峙した時、どのようなIntelligence gameを展開してくれるのか愉しみだ。

え、私の釣果?リングに沈んだのでよく覚えてないんですよね・・・。

 

 

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藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

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渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
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