「朱い奴ら」

 

解禁は生憎の雨らしい。前日から降り続く雨のせいで、増水と濁りが予想された。前の晩はギリギリまで行くかどうか悩んでいた。何たって片道2時間以上かかるのだ。往復約5時間を無駄にする事を考えれば他の選択もあったろうに。

 

湖 山 雨

 

翌早朝、小雨が降る中僕たちは、そのダム湖の上に立っていた。予想通りの展開。行かない時の計画なんて、これっぽっちも考えてなかったんだから。

 

午前中は本流を釣り上がり、夕方にバックウォーターでサクラ狙い。解禁を華々しく飾りTailSwingでcolumnデビュー。これが当初の計画だった。

 

が、しかーし。本流は変色し、水かさを増した流れが河原を覆い、餌釣り師は道から糸を垂らしている。なんてこった。予想していたとはいえ本命のポイントが全く釣りにならないと分かって、僕とスージーさんは途方に暮れた。

 

残された選択肢はダムに戻ってのサクラ狙い。けれど我々2人、サクラマスには元々余り興味がないのである。止水の釣りより渓相の変化を楽しみながら釣り上がるスタイルが好みなのだ。

 

減水 山女

 

来た道を急いで引き返し、ダメ元で支流の流れ込みをチェックすると、本流より遥かに濁りが無い。雨もほとんど上がりかけていた。周りをチェックして川までの降り場を確認した時点で今日のポイントが決定した。

 

去年の渇水時に川底の地形は把握しているので、狙うポイントは決まっていた。釣り始めて直ぐ、先ずはスージーさんが小さいながらも今年初のヤマメをGET。

 

もちろん、スプーンで!嬉しそうなスージーさんが、早速、記念撮影に取り掛かる。ヤマメが居るのが分かっただけでもその場の空気が和む。程なくして僕のルアーにもヤマメがまとわりついて来たがフックアップならず。それを境にパタリと反応が無くなった。

 

渓流 山女

 

上流域の川幅は狭く、遥か上手の林道から眺めただけでは決して入渓しようとは思わない。水質だけは本流とは打って変わってクリアだ。ポイントを交互に譲り合いながら釣り上がると、程なくして僕にも待望の初ヤマメがヒットした。美しい。

 

山女 パーマーク 渓流

 

小さな綺麗なヤマメ。元気なチビヤマメ達が次々にルアーに食いついて来る。

 

原生林 渓流 獣道

 

もののけ姫の世界にでも出てきそうな位、雰囲気満載の森が、多少の雨くらいではビクともしない清涼な川と美しいヤマメ達を育てているのだろう。

 

幼い頃、祖父に連れられ行った奈良の源流の森と同じ風景がここにもある。僕にとってのノスタルジー。言葉に出来ない想い。

 

渓流 砂防堤

 

最後に辿り着いた砂防堰堤。

 

僕たちの解禁の終着点。

 

数やサイズこそ出なかったけど、幸せな気持ち一杯にさせてくれてありがとう。

 

渓流 コーヒー マグカップ

 

そして最後はスージーさんが淹れてくれた最高に旨いコーヒーを飲みながら思い出すのである。終了間際にバラした、あの魚の事を。

 

大きさは尺前後。しかし、大きさなんてどうでも良かった。バレる瞬間に見た、そいつの体色が目に焼き付いて離れない。鮮やかな朱色に染まった個体は、思わず手で掴もうとした僕の手をすり抜けて下流へと姿を消した。

 

朱いアイツとの2度目の邂逅。

 

昨年は解禁直後に別の流域で。今年は解禁日の最後に、2人の前に現れて消えた。朱い奴らとの出会いに共通項があるとすれば、そのどちらの釣行にもスージーさんがいた事だ。もしやと思いその日の写真をチェックしたところ・・・。

 

アングラー 赤

 

貴方も朱いですやん!

 

やはり。

 

キーワードはこの男かも知れない

 

 

Ikuto Nakahira

Ikuto Nakahira

投稿者プロフィール

生まれ:1971年
メインターゲット:トラウト 
メインフィールド:渓流
-メッセージ-
幼い頃、祖父に連れられ行った奈良の吉野川源流で釣ったアマゴがトラウトとの最初の出会い。目指すターゲットは朱色に染まる鼻曲がり。

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