セピア色の感傷

林

5月下旬。御池。

正月以来の夢を求めて、朝マヅメを過ぎた時合に、車をいつもの駐車場に停めていそいそとタックルを準備していた。

湖の上空

ふと、湖畔の方から1人のバサーが歩いてくる。その手にはレインボーがぶらさがっていた。思わずリアクションバイトしてしまう。

「お!レインボーですね?」

バサーの方がしてやったりという笑顔でこっちを見る。

「アメリカのビッグベイトなんですよ。」

「え・・・?」

「マットルアーズっていうビッグベイトです。」

マッドルアーズ

久しぶりに驚いた。木陰の下とはいえ、ルアーと魚を見間違ってしまった。

長年ルアーに親しんできた自分がまさかそんなこと。

マットルアーズ

帰ってネットで見てみたら、全長31㎝、重さは380g。これを見てまた驚いた。ジギングをやっていた頃でも、300gといえばヘビーな部類に入っていた。380gをキャストする・・・?

久しぶりにバスルアーに惹かれた時間だった。

 

バスフィッシングから離れて随分経つが、たまに見る専門チャンネルでのバスルアーの進化・バリエーションの多さには本当に驚かされる。ビッグベイトを投げた次の1投で、親指の先ほどのワームを同じ魚に魅せたりする。こんな振り幅の大きい釣りは、他にはないだろう。

 

とある有名アングラーと一緒に釣行したときに、彼が言った言葉。

「バスをある程度経験したヤツは大抵どんな釣りでも上手い。なぜなら、ルアーを止めて釣ることを自然に覚えるから。」

ニセモノの餌を止めて、なおかつバイトさせる。ある程度の人は普通にやっていることだが、言葉にすると確かに深い。バスフィッシングにはルアー釣りのエッセンスがたくさん詰まっている。

 

自分も小学生から、大学生の途中まではバスにどっぷり傾倒した。しかし、スモールシルエットでリアルフォルムなルアーが出始めたあたりから、段々と冷めていった。そして、ツネキチリグのようなフィネスな釣りがもてはやされるようになると、完全に興味を失ってしまった。ちょうど自分自身の過渡期だったのかもしれないが。

ルアーフィッシングはロマンを求める釣りだと思う。だから、その主役であるルアーはロマンチックでなければならない。自分の求めるロマンチックさを追求すべきだ。とにかく釣れればという時期もあっていいが、それを過ぎたら、そういう道を進むのも、きっと楽しい。

クランクベイト プラグ

自分がルアーに求めるロマンチックさは、言い換えると「美しさ」「愛嬌」「ノスタルジー」みたいなものになるのだろう。持ってるだけでワクワクしてしまうようなルアー。男の玩具。いつかはそんなものばかりを厳選し、タックルボックスに詰め込んで、フィールドに向かえるような腕の持ち主になりたい。

湖

この日は、トラウトの気配がまるでなかった。信じて3時間ほど沖合にキャストを続けたが、やはりないものはなかった。その代わり、足元にはランカーバスのスクールが何度も泳いでくる。周りには、ベテランアングラーや親子連れが数組いたが、誰も釣れてない。大体どの魚でも見えてるやつは釣れないものだ。

バサー 釣り人達

ふと偏光グラス越しに近くのインレットを見ると、10匹ほどの群れがサスペンドしている。どれも大きい。そしてその近くを3㎝ほどのベイトフィッシュがすーっと横切ると、数匹が頭を振って追いかけた。ベイトは水面をチョンチョンと跳ねながら逃げる。

トラウトロッドには5gの小さいスプーン。軽くキャストしてロッドの角度を調整しながら、水面直下をリトリーブする。リーダーを見せたくない。そして、1回、2回と水面にスプーンの引き波を立てる。

スプーン ピュア

スクールの中で3番目くらいの大きさのバスが顔を向けた。スプーンをテンションフォールさせる。軽く口を開けてヤツは吸い込んだ。

さすがにランカー。パワフルにドラグを鳴らし、ジャンプを繰り返し、必死に抵抗する。結構な時間格闘し、ヤツはネットに収まった。

ブラックバス スプーン ピュア

思ったよりも大きい。メジャーをあてると53㎝。こいつより明らかに大きいヤツがいた。ということは60オーバーもきっとたくさんいるのだろう。

思ったような釣りではなかったが、楽しい時間を過ごさせてもらった。

ブラックバス スプーン

ほんの少しの間、バスを眺めながら自分の若い頃を思い出す。昔みたいに熱くはなれないけど、セピア色の感傷にふけることはできた。

ブラックバス リリース

悲しいことだけど、バスやブルーギルにはその繁殖力の強さから常に害魚論争がつきまとう。

この御池でも定期的に駆除が行われているようだ。

魚を釣りたいがために放流するのも人間。それを害魚として駆除するのも人間。

ただ、1アングラーが個人のエゴで密放流を行うなどはやはり言語道断だ。ニュースでバスのスポーニングベッドに電極を使って電流を流し、駆除する映像を見たことがある。

 

かつてバスフィッシングを愛した者として、いたたまれない気持ちになった。

 

あの湖にバスを放流した人がもしその映像を見たらどう思うのだろう。

湖に電気まで流さざるを得なくなった地元の方々の生活のことは考えないのだろうか。

 

アングラーは、所詮自然に遊ばせていただいているだけの存在だということを、忘れてはならないと思う。

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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