ヒューマン ネイチャー

 

今期最後の渓流釣行。

 

苦杯をなめさせられ続けたハイランドへ、まるまる2日。泊まりがけでの挑戦をすることにした。狙うはランドロックのサクラマス。何としても50オーバーは欲しい。

 

パラゴン セルテート カルカッタ

 

満を持して、ここまで準備してきた。

この”TAIL SWING”を立ち上げたこともある。禁漁前の節目となる「一美」を添えるべく、それぞれタックルも新調した。

 

自分は念願のAnglo&Companyのparagon743にダイワのセルテートを。藤井くんはシマノのカルカッタ101にウッドノブを着けてこの日を迎えた。もちろんスプーンをずらりと揃えて。

 

午前1時。藤井くんを拾って、3時間半のロングドライブ。

 

なぜか、彼はハイランド釣行のときはいつも徹夜だと言う。寝る気満々なのである。

この日も、1時間半ほど走り、早すぎる朝食で腹ごしらえを済ませたあたりから、オーラを漂わせてくる。

 

まあ、自分もまだ体力には自信があるし、そこまで気にはならないのだが、何となくBGMを変えて、眠れなくしてやろうと思った。一回り近く年下の彼の音楽の好みは大体知っている。その上で、「こんなのは知らねーだろ。若造。」的なパンチをくらわせてやろうと思った。強烈にかっこいいのを聴かせてやろう、と。

 

あ、別に自分が年寄りだとはさらさら思ってないが。

 

マイルス・デイビス

 

マイルス・デイビス、1988年の「ライブ アラウンド ザ ワールド」その中の1曲。「ヒューマン ネイチャー」。マイケル・ジャクソンの有名曲のカバー。

 

ヒューマン・ネイチャー マイルス・デイビス

 

マイケルの曲はおそらく3~4分程度だろうか。しかし、マイルスのは12分48秒。しかも元の曲の原型をとどめているのは最初の2分半のみ。この後が真骨頂。

 

ひとしきりテーマを演奏し終わると、段々と静かに、単調になっていく。マイルスのつぶやくようなトランペットにサックスのケニー ギャレットが絡みつくようにフレーズをかぶせてくる。

 

時間が過ぎ、マイルスはフェードアウトしていく。代わりにサックスが妖しげに、うねるように、しかしあくまで美しく、インプロビゼーションを繰り出す。

 

聴いている人間に、普段意識しない腹の底からつきあげてくるような感覚を与える強烈な演奏。

 

夜 月

 

サックスの咆吼は時間とともに熱を帯び、バンドもそれに追随する。もはや何の曲なのかもさっぱり分からない。まるで、地上をゆっくりと這い回っていたドラゴンが鎌首をもたげて、全身のうろこを逆立てて、ふるわせながら轟音とともに天に昇っていくようだ。

 

そして、怒濤のクライマックス。突如、マイルスの稲妻のような一音で曲は終わる。

 

恋だの、愛だのといった凡百の音楽では決して体験できない、原初の感覚に似た何か。

夜中の山道で爆音を流しながら、無言で彼の反応を感じる。

 

「・・・ものすごいっすね。これ。」

「元(の曲)に戻らないんですか!?」

 

他にも、感動を伝えたいのか、きれぎれの単語で感覚を伝えようとしてくる。

「いやぁ。すごいの聴いたなあ!」

 

よし。勝った。

 

そう思って、機嫌良く運転をしていた10分後には、彼は助手席で口をぱっくり開けて、大いびきをかいていた。

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釣行 準備 車

 

夜明け前には、目的のインレットに到着した。夜明けが待てない。そそくさとウェーダーを履き、ヘッドライトの灯りを頼りにガイドにラインを通す。今日こそ、決着をつけてやる。気合いは十分だ。

 

本流 サクラマス

 

ダム サクラマス

 

本流 サクラマス スプーン ベイトタックル

 

しかし、やれどもやれども、何も反応がない。ジャラ瀬が蛇行しながら、魅力的な淵が絶好のポイントをいくつも形成している。ここだ!というポイントでトレースコースを読んで、自分なりの絶妙なキャストを決めても、生体反応は皆無。チェイスすらない。

 

渓流 透明度

 

ここの水は、自分たちが普段行っている渓流よりもはるかに透明度が高い。まるでガラスか水晶のようだ。流れを横切ろうと水に入ると、思わずその深さにびっくりしてしまう。目が錯覚を起こしているのだ。しかも、流れは押しが強く、移動にかなり体力を奪われる。

 

渓流 一服

 

いくつかポイントをむなしく通過したあと、先行者を見つけた。エサ釣りの方だったので、そこから上流はあきらめることにした。

 

渓流 スプーン

 

車を2㎞ほど上流に走らせるが、幅の狭い渓流に7ftのロッドは、いかにも不釣り合い。テンションが上がらない。魚も釣れない。まさか、こんな日になるとは。。。

 

本流 帽子 ウェーディングシューズ

 

夕方を待たずして、本流から渓流では、攻める場所を失ってしまった。もう一度インレットから釣り上がる気は起きない。疲労はかなりのものだったが、まだ心は折れていなかった。万に一つの望みを託して、ダムに下る。

 

が、ここでも、ものの見事にターンオーバー発生。薄気味悪いバスクリン色をした湖水を離れるのに、大した時間はいらなかった。

ならば、とダムの下流を要所要所見ていくが、やる気が湧くようなポイントはない。

 

17時前には、宿にさせてもらうSくんの家に着いていた。

 

ホワイトホース

 

なんともやりきれない初日だった。この日の少し前に60オーバーが釣れていた。自分たちもそれに触発されて来た組だったが、後で調べたら、この情報に加えて禁漁前で平日からアングラーが入れ替わり立ち替わり、だったらしい。ヤマメ激戦区の厳しさを思い知らされた。

 

風呂に入り、若い2人に料理を作る。イカそうめんをごま油とネギであえたもの。もやしのナムル。ホットオイルサーディン。〆は八宝菜風のあんかけうどん。スタミナ回復料理だ。

 

安酒を3~4杯あおって、ひとしきりしゃべると、泥に沈むように寝ていた。

藤井くんに、「明日、どうするか考えてて。」と伝えた記憶だけはあった。

 

翌朝、4時半。となりの大きないびきで目が覚める。9時前には寝た記憶がある。全くの熟睡だった。

豆電球の灯りの下、話しかける。

 

「おい、おい。」

「はいぃ。。」

「どこ行く?」

 

藤井君が急にはっきりとした声になる。

「御池行きましょう!」

 

一瞬頭の中が白くなる。ここからゆうに200㎞は離れている。一体何時間かかると思ってるんだ。

「いいよ。」

 

と返事してから、しばらくのろのろと準備をした。頭の中は動いていなかった。

 

釣り場へ

 

午前5時、ハイランドを後にする。こうして今年の渓流はなんともあっけなく終わった。できる限りのスピードでホームグラウンドを目指す。

 

湖 ニジマス スプーン

 

午前9時、雨の御池は何だか優しく見えた。

移動は結果的に正解だったのだろう。それほど時間が経たずに、自分のロッドに魚信が伝わる。寄せてくると、35㎝くらいのまあまあのレインボーだ。

 

ファイトシーンを撮影してもらおうと、しばらく手前で泳がせていたらポロリと外れてしまったが、とりあえずの満足は得られた。

 

サトウオリジナル アンサースプーン

 

この日の御池は珍しくマッディーウォーターだった。そして、この日独壇場だったのは、サトウオリジナルのアンサースプーン。見た目はファットな印象だが、アシンメトリーなデザインのせいか、スイミング姿勢は驚くほどに滑らかで、艶めかしい。陸上にあるときよりずっとスリムに見える。

 

サトウオリジナル アンサースプーン ブラックバス

 

この後も難しいこのフィールドでバイトを連発させて、自分を驚かせた。

また1つ、いい出会いが得られた。

 

スプーン タックル パラゴン

 

これを書くにあたって、マイケルのヒューマンネイチャーの歌詞を検索してみた。

一見、ラブソングのようだが、内気な上に、スーパースターになったため自由に外を出歩くことができないマイケルをイメージして書かれたと言われている。

 

まるで、自由を求める籠の中の鳥のように。

 

自分たちも日常から自由と夢を求めて、遠くへと繰り出したが、今回だけはかつてないほどの惨敗だった。

 

自由がいつもいつもいいとは限らないんですよねえ。。。

とマイケルやマイルスに愚痴りたくなるくらいの。

 

それでも、またすぐ次のことを考えてしまうのがアングラーの性懲りもないところなのだが。

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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