フックにまつわるエトセトラ

 

ミッチェル 308

渓流シーズンが終わってしまった。
毎週末の早起きと深夜早朝のドライブも来年3月まではおあずけだ。

湖のレインボーももう少し水温が下がらないと気分がのらないし、何より高水温で釣ってしまうとリリースが難しい。

加えて、いつも行く湖のすぐ近くにある新燃岳が6年振りに目を覚ましてしまった。

しばらくは9月までの釣りを振り返りながら過ごすことにしよう。

アングロ パラゴンG リールシート

フックについて考えることは奥が深く、悩ましく、また愉しくもある。
ある時、このサイトの管理人の藤井くんが言ってきた。

「フックが魚の口に刺さるポイントを研究したいんですよ。口の端から何ミリとか、そういうの。釣れた時の刺さっている場所の写真を撮ってくれませんか。」

「?」

ちょっと何を言っているのか分からなかった。年齢を重ねる方がいいことも、反対のこともあるのだけど、その一つが沈黙を覚えることかもしれない。

彼が何か思っていることはうかがえたのだけれど、大したことがないように感じられた。その時はきっと彼から視線をそらし、遠くをぼんやり眺めて沈黙を決め込んでいたに違いない。

ヤマメ スプーン HOBO

話しはすこしそれるが、渓流や源流のルアーフィッシングはそろそろ全てシングルフックでやるべきだと思う。地域差はあるだろうけど、ヤマメなら尺を超えれば万々歳。35㎝もあれば一生モノと言える釣り。

だけど、逆に考えれば大きくてもたかが30㎝の魚なのだ。

昔はよく海で青物を釣っていたのだけど、時には太軸のフックを引き延ばし、時にはドラグがいびつな悲鳴をあげるほど激しくラインを引きずり出していくファイトを見せる彼らに比べると、ヤマメに代表される渓魚たちはいかにもか弱く、引きも決して強いわけではない。せまいせまい流れの中で岩陰に身を寄せ、その美しい姿をひらひらとさせながら必死に生きている存在。

昔、ミノーを使っていたときは1日の内かなりの匹数、イレギュラーなフッキングで釣れてしまっていた。まるで居酒屋で見るアジの活き造りのような格好で口と尾びれにフックがかかってUの字で上がってくるヤマメを見ては心が痛んだ。

また、トリプルフックを搭載したスピナーが上下のアゴに両方刺さってしまって、苦労してねじりながら外したことも1度や2度ではない。

釣りというジャンル全体を見渡しても、3本イカリ針なんてものを使う釣りはほとんど少数派ではないのか。まして、美しい魚を美しいタックルで釣ろうというトラウティストの方々ならなおさらフックはシングルオンリーがいい。

 

メリットだって多い。ミスキャストをして木の枝やボサに引っかかってもかなりの確率で回収できるし、根掛かりをおそれずにピンスポットやディープを攻めることもできる。仮に根掛かりしてもトリプルを搭載したルアーよりはるかに回収率は高い。ランディングネットのクレモナに絡むこともほとんどないし、移動中に色んなところに引っかかるストレスだって1/3以下だ。

ミノーを使うアングラーであれば、アクションバランスの問題はあるが、ベリーとテイルのフックをそれぞれシングルに替えるだけでも魚に与えるダメージは随分違うに違いない。キャッチアンドリリースはもちろんのことだけど、釣った後の魚のコンディションに気を遣うのはとても大事なことだと思う。

結局、フィールドに行って釣れなかったり、釣れてもコンディションが悪い魚だったりして一番嫌な思いをするのは我々自身。因果は巡るのだ。自然に遊ばせていただいているという感謝は常に持っていたい。

滅多に他人に会うことなんてない渓流の釣りで、誰に見せるわけでもないけれど、シングルフックのスプーンのみで1日過ごすと、やはり清々しい気持ちで終われる。
確かにダブルやトリプルを付けていれば獲れたかもしれないランカーも沢山いたけれど、それは喰わせきらなかった自分の腕の問題だ。またどうすればいいかを考よう。そんなプロセスも楽しい。

ヤマメ スプーン HOBO

話しを元に戻そう。

管理人が言ったことの意味が分かったのはひょんなことからだった。
それまで自分はエサ釣り用のチヌ針やヤマメ針なんかをタイイングしてループフックを作っていたのだけれど、ある日、普通のシングルフックで1日を通してみたことがあった。
半日もすると気が付いた。

ノーマルのシングルだと、ループフックに比べてものすごくイレギュラーなフッキングが多いのだ。ちょっとここに書けないような場所に掛かってくる頻度が異様に高い。

ヤマメ スプーン バイト

逆にループフックは魚のサイズにかかわらずきれいに口の端にかかることがほとんどだ。たまに危険な箇所に掛かったりもするが、致命傷になるようなことは自分に関してはほとんどなかったと思う。

ここ数年、自分はほとんどループフックしか使ってこなかった。逆に管理人はノーマルのシングルばかりを使っていた。だから彼の言うことが分からなかったのだ。

ガリガリにスレきったエリアトラウトと違い、ネイティブのヤマメは季節・活性によってはルアーを丸呑みにしようとする。また、チェイス~バイトがレインボーなどのように直線的に追尾するのではなく、ジグザグにまとわりつくようなものが多い。このせいもあってイレギュラーなフッキングが多いのだと思うが、それにしてもノーマルシングルとループフックの差は歴然としていた。

電球

この原因はなんだろう。いくつか仮説を立ててみた。

ヤマメ スプーン DCバイト

1 フックをベイトとして認識している

一つ特徴的なのは、ノーマルの方がフッキングポイントが口の奥深くで、ループはより口の端に近い場所だったことだ。

これはもしかしたらループフック自体がルアーの役割をしているのでないか。そしてスプーンに惹きつけられ、近寄ってきた魚がフックを食べようとしたのではないか。そう思った。

特に、フックの根元に巻かれているスレッド。自分もそうだし、ほとんどの市販品にも赤色の糸が使われている。このおかげか、なんとなくフック全体を見るとミミズみたいに見える気もする。仮にそうだとしたら一旦くわえてから食べようとしているのではないか。

反対に、ノーマルシングルは細い1本の針金だ。ベーシックなのは黒1色だろう。もしかすると激しく振動するフック自体が認識できず、スプーンのテイル部分に直接噛みついてくるのかもしれない。
また、仮にベイトとして認識していたとしたら、それはきっとごく小さな川虫のようなものだろう。それを一気に丸呑みしようとしているのかもしれない。

ヤマメ スプーン

2 フックの可動性

実は、これは自分が考えたことではなく、「東洋式擬餌針研究所(https://www.fimosw.com/u/toyosikigijielab)」で有名な関根崇暁さんが言っていたことなのだけれど、ループフックには根元に柔らかいラインがあるため、魚の口の中で倒れたりして柔軟に動き、少し口の端に移動して刺さる。反対にノーマルのシングルは口の中でフックポイントが当たった場所でダイレクトに刺さる。というものだ。

これも面白い仮説だと思う。

また、彼がよく言うことの一つに、
「魚は大きいベイトに対しては大きく口を開け、小さいベイトには小さく開ける。」
というものがある。
もしそうなら、ルアーに対して少し小さめのフックを付けることがイレギュラーなフッキングを避けるために効果的かもしれない。

これは来季の課題としておこう。

渓流 ヤマメ スプーン HOBO

意識しすぎなのかもしれないけれど、自分にはどうしてもトラウトルアーフィッシングには今よりも美学が求められているような気がしてならない。
その代表的なものがフックの問題だと思う。

そして、これはアングラーだけでなく、ルアーを製作するメーカーの方々にも考えていただきたいことだ。

美しい魚には美しい釣りを。

こんなフレーズがルアーフィッシングの世界で流布したらとても素敵なことだと思う。

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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