ライン狂想曲とレインボーの輪舞

 

紅葉

11月初旬、宮崎の中央部を流れる一ツ瀬川の上流、西米良村に来ていた。ここは九州では珍しく、シーズンオフからしばらくして自然河川にニジマスを放流し、アングラーに開放している。

大分涼しくなった川原は秋の気配を爽やかにまとい、時折顔をなでる冷たい風はまもなくやってくる冬を感じさせる。乾いた空気と、穏やかな陽光と、渓流という組み合わせだけで幸せな気持ちになれる。

渓流シーズンは終わったが来年に向けて、どうしても試したいことがあった。

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釣りで一番大事なのは糸と針だ。そう固く信じている。

渓流ロッドで例えば5.6フィートは約1.7メートル。それに対してキャストし、放出されるラインは長い時は20メートル以上におよぶ。いくらハイスペックなロッドを使っていたとしてもその10倍以上の長さで伸びるラインとの相性が悪ければ、キャスト~アクション~ヒット~ランディングという一連の流れに当然悪影響が生じてくる。それを1日通すと、結果にかなりの違いが出てくる。

もっと言うと、マスのエサ釣り堀なんかに行ったとき、竹竿とミチイト、オモリ、針、練り餌のセットを渡されることがあるが、練り餌を付けないで針のみをチョンチョンと踊らせていても釣れてくることがある。道糸と針だけあれば、釣りはとりあえず成立する。竿は単純に切った竹でも大丈夫なのだ。極端な例ではあるけれど。

ニジマス HOBOスプーン

自然渓流でのスプーニングはとても楽しい釣りだと思う。もっともっと世に広まっていいものだと思う。

特に今エリアトラウトをやっているアングラーなら、キャスティングのアキュラシーを上げるだけですぐに適応できると思う。何せエリアはある意味トラウト生態観察の宝庫だ。目の前の条件(魚、天候、水温 etc)は渓流を釣り上がるネイティブフィールドと比べるとほとんど変化がないと言ってもいい。そんな中で、何が釣れるか釣れないか、やり込んだ人ならとてつもない情報量が身に付いている。何より、スプーンを泳がせることにかけては現代の他の釣りの追随を許さないだろう。

もっともっとエリアアングラーがネイティブフィールドに出ていって欲しい。型や数はエリアでやるときよりだいぶ落ちるだろうけど、ネイティブではその代わりに得られるものがとても多い。やっぱり釣りは森羅万象を感じながらやってナンボだろう。

パラゴンG ミッチェル

自分のロッドは渓流では長めのAnglo&company ParagonGシリーズ。5フィート11インチのグラスロッドだ。それも昔のそれとは違い、UDグラスという縦繊維の素材で出来ていて、グラスなのにかなりの高感度。これにヴィンテージのミッチェル308を合わせている。

パラゴンG HOBOスプーン

そしてルアーはオールドスタイル主体の小型スプーン。2.5~5.5gが主体。

このセットを眺めているだけで、もう、ロマンあふれる琥珀色の時代の香りがしてくる。ラギッドな男の可愛らしいパーツを垣間見るような気持ちになってくる。ロッドアクションに頼らず、カリカリ巻いて、ストイックに釣りをしてやろうという気になってくる。

ミッチェル308

ただ、しかしというか、やはりというか、このリールがくせ者だった。フランスの貴婦人ともいわれる1970年前後産まれの彼女はとても気難しい。ラインを選ぶのだ。

ミッチェル308

実はここ数年、ラインには悩まされ続けてきた。帯に短しタスキに長しで5~6種類をああでもない、こうでもないと巻き替え続けてきた後、やっとしっくりきたのは大分前にカーディナル33に巻いていたバリバスのベイトフィネス、0.4号だった。

悩みに悩んで、カーディナルのをミッチェルに巻き替えてみた。そして、これがハマった。

ちょっとライン自体にザラつく感じはあったが、大きなトラブルもなく今シーズンはこれを使ってきた。そして、最終釣行の前に少し色気が出て、同じラインの0.3号を新しく買って、巻いてみた。

バリバスウ スーパートラウト アドバンスダブルクロス

ところが、今年の渓流最終釣行の時、やはりこの釣りがとても微妙なバランスで成り立っていたことを再認識させされる。おそらくは何度かブラッシュアップが繰り返されたのだろう。自分のミッチェルに巻いているものより随分シルキーな手触りになったベイトフィネスはミッチェルのワンタッチスプールボタンにほぼキャストする度に巻き付いた。この日はろくに釣りにならなかった。ベイトリールにはきっと快適であろう使い心地は貴婦人のお好みではなかった。

かと言って旧版のラインは手に入りづらいだろうし、仮に手に入ったとしてもどうせまたすぐに新しいのを探さないといけなくなる。違うのを探そうと決めた。

このリールに、またこの釣りにマッチするPEラインは何なのか。

その前にそもそもなぜPEなのか。当たり前だがこのミッチェルが作られた時代、PEラインなんて代物はなかった。今でもこのリールにPEは負担が大きいから使わない方がいいと言う人も多い。

タックルはバランスが重要だ。シャキッとしたショートレングスのミノーイング用ロッドならば、ラインはクッション性があるナイロンラインがいいだろう。硬いロッドには柔らかいライン。ショートロッドでミノーを小気味よくトゥイッチさせても水から飛び出さないために、硬いロッドのせいでショートバイトを弾かないようにするためにも。

逆にふわりとしたアクションの長めのグラスロッドならばラインはほとんど伸びがないPEがいい。柔らかいロッドには硬いライン。ロングロッドはルアーにアクションを加えるよりはその微細な動きを感じるためのアンテナであり、トラウトのファイトをゆったりと、余すことなく味わい楽しむための相棒だ。

バリバスウ スーパートラウト アドバンスダブルクロス

そして、悩んだ末の一手は同じバリバスのスーパートラウト アドバンス ダブルクロスPE。

一番細い番手が0.6号という太さが少し気になったが、東京の某有名プロショップの店員さんから、「これはPEとエステルラインをより合わせたものなんです。トラブルはほとんどないですよ。」と言われてその場で買った。果たして。

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トラウトアングラー

秋の陽光をくるまれながら、風の雅を感じつつ釣りをする。上流にも、下流にもアングラーの姿が見えた。

こんな近距離で他のアングラーの釣りを見るなんて、シーズン中にはありえない。シムスのウェーダーを履いたフライフィッシャーの方と和やかな会話を交わし、マナー違反にならない距離を保ちながら釣りをする。

パラゴンG 渓流

場所を転々とすること数か所。やっと付き場にあたった。

ニジマス HOBOスプーン

今年のニジマスは去年までと違い、コンディションが抜群だ。大抵が尺上で、ヒレもダメージがない。幅広で強烈なファイトを見せてくれる。

ルアーはAnglo&company、HOBOスプーン3.5gのシルバーカラー。

ニジマス HOBOスプーン

1ヶ所で釣っているとすぐにスレが進行する。2~3匹釣ったらルアーをローテーションさせる。これも昔エリアで覚えたこと。

少しレンジを下げて使ったのはHOBOスプーン5.5gの青銀。

ニジマス HOBOスプーン

ニジマス HOBOスプーン

特にこの日反応が良かったのはHOBOスプーン3.5gのコパーカラー。銅の穏やかな反射がいいのか。こまめにローテーションさせながら30匹以上は釣ったのだが、半分近くはこれで結果を得た。

ショップにあったこのカラーの在庫は仲間と全て買い占めてしまった。ぜひ復刻して欲しい1枚だ。

ニジマス バイト スプーン

これは、今年使い続けたアートフィッシングのDCバイト、3.1g ヤマメカラー

ニジマス ダーデブル

小さかったけど、特に嬉しかった赤白ダーデブル!!

ニジマス HOBOスプーン

この日一番の大物はHOBOスプーン3.5g、銀ベースの茶黒。

フックは全てヴァンフックの8番。バーブレスを使った。

ミッチェル ライン

思わぬフィーバーに時折テストというテーマを忘れそうになったが、貴婦人によくあるこんなトラブルもこの日は1回だけ。このライン、トラブルという面では申し分ない。また大物にブッシュに潜られたときもブレイクせず、傷も付いていなかった。強度も問題ない。

ただ、コンマ6号という太さとエステルが混じっているせいかキャストしたときの重ったるさがどうにも気に入らなかった。釣った直後は80点くらいかなあ、と思っていたけれど、やはりキャスト精度の面から考えるとこのロッドには合わない。まだこの悩みを続くようだ。次はエリア用のPE、コンマ3号くらいを試してみよう。

西米良 放流場所

ところで、この日釣り場で出会って、30分程話し込んだ地元のご年配の方がこうおっしゃった。

「もっともっと釣り人に来てほしい。そして、民宿に泊まったり、鑑札を買ったり、食堂で食事したり、自動販売機のジュース1本だけでもいい。そんなことが積み重なって村が活気づくんだよ。」

普段、このサイトでは渓流の場所を明らかにはしないのだけど、今回は詳細にお伝えしようと思う。西米良村の村所上流1.5キロほどにあるこの2本の橋の前後に放流されています。11月末までは完全キャッチアンドリリースです。

今年のレインボーは特にコンディションが抜群です。

ぜひ近隣の方はいらっしゃってください。マナーを守ったうえで。

西米良村 百菜屋

そしてお昼はぜひこの村はずれにある「百菜屋」へ。百歳よりはだいぶお若いおばあちゃんたち手作りの定食は、寒空で冷えた身体をやさしく暖めてくれます。

そして、一言二言、おじいちゃんおばあちゃんと話しをしていただけると幸いです。

こんなコラムがいつも思い出をくれるのこの場所に、ほんのちょっとした恩返しになることを願います。

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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