儚魚釣具考(その一)

 

人の夢と書いて儚(はかな)いという漢字になるのは有名な話しだ。

果たして、人そのものが儚い存在なのか、人の意志の弱さを揶揄(やゆ)した漢字なのか、自分には分からない。もしかしたら、日本人特有の諸行無常という心情を表しているのかもしれない。

虹鱒 スプーン
転じて、ヤマメ、イワナ、ニジマスといった渓魚たち。イワナやニジマスの寿命は6年程度、ヤマメにいたってはその半分くらいだと聞いたことがある。

渓流が他のフィールドと一番違う点はその閉塞された環境なんだと思う。あの狭い、浅い流れの中で魚たちは限られた年数を必死に生き抜こうとする。増水、渇水、魚を狙う鳥、仲間に襲われることもあるだろう。そして、人間。

山女魚 体色
渓魚たちがなぜあんなに美しくなれるのか。

もちろん、周りの美しい環境に自分たちを溶け込ませるための擬態なんだとは思うが、自分にはそれ以上に過酷な環境で命を燃やしてきた彼らなりのプライドのように思えてならない。

山女魚 赤
その一生を彼らなりに精一杯鼓舞しているのではないだろうか、と。

人は夢を求めて渓流に入り、彼らをその手に収めようとあの手この手を尽くす。狭い流れに入れ替わり立ち替わり。

自分はルアーフィッシングが好きだ。渓流でもルアーしかやらない。
だからこそ、なるべくの敬意と愛情をもって彼らに接したいと思う。それを自分なりに形にして流れに足を浸したいと思う。

儚い魚たちとなるべく対等な駆け引きをするために。

渓流 アングラー
5フィート前後のファーストテーパーのロッド。
5ポンドのナイロンライン。
5㎝5gのヘビーシンキングミノー。

何故だか、「5」という数字が並ぶ。きっとこれが現在の渓流ルアーのスタンダードなんだと思う。

自分も昔はこのセットで渓流に入っていた。

そもそも、渓流のヤマメがトゥイッチングに好反応示すを知ったのは今から15年くらい前のことだった。海のメッキ釣りとかジギングに没頭していた時期に、ふとしたきっかけで渓流に入ったのが始まりだった。

その頃はまだここまで本気でネイティブトラウトをやる気はなく、5.6フィートのシマノのロッドに安いリール。適当な太さのナイロンラインにルアーはダイワのDrミノー黒金のみ。確かまだシンキングタイプはなく、フローティングのみでやったと思う。

渓流
ピンポイントにキャスティングすることは小さい頃にバスに没頭していたおかげで、(今でも決して上手ではないが)そんなに苦労はしなかった。後は流れの筋を読んでリトリーブすることがあったが、これもすぐに慣れた。そして、ヤマメ達は港湾部のスレたメッキよりはるかに素直にトゥイッチングに反応してくれた。

それから段々と渓流に対して熱を帯びてくると、やはり5フィートの硬いロッドにカーディナル、そしてDコンを使うようになった。あの驚きは今でもはっきりと覚えている。確かに、釣れる。圧倒的だった。

山女魚 スプーン
ただ、ウソではなく、この釣り方に最初から違和感があった。誤解を恐れず言うが、ヤマメに限らず、渓魚はそれほどファイトしない。ヤマメはバイトこそ反転するせいか強烈だが、ファイトはローリング主体だ。イワナも基本的にはグネグネとしたファイトだった。レインボーはその中でも剛力だが、同じサイズの青物と比べると、やはり数段劣る。

「5」という数字で構成されたタックルたちは渓魚と相対するには明らかにオーバーパワーに感じた。彼らとイーブンにファイトするためではなく、ヘビーシンキングミノーをアクションさせるためのタックルだと思った。何よりフッキングの問題が嫌だった。そう感じてしまうと、当時は他にも趣味があったこともあり、数年間は3~4月に何度か決まった川に行くだけの日々が流れた。

スプーン ボックス
今さら自分ごときが言うまでもないが、トラウトフィッシングにはアングラーが高い精神性を宿すことができる「何か」があると思う。釣れる、釣れないだけではない何か。

そして、それらはタックルやファッション、ひいてはライフスタイルにも現れて欲しい。釣りなんてものは所詮人間のエゴイスティックな行動に過ぎないのだが、それでも、あの美しい魚たちと対峙するなら、せめてその時間は身も心も美しい人間を目指していきたい。

山女魚 パラゴン
このサイトを始めてからも、あまり渓流には気が向かなかったが、去年の夏出会ったヤマメ(”Into the light”)に魅了された。大きさは8寸程度だったが、自ら発光するようなその美しさに目を奪われ、何故だかとても愛おしい感情が芽生えた。渓流を本気でやってみようと思わされた。

また同時に、次のシーズンに向けた道具たちのイメージも湧いた。

ソフトな6フィートのロッド。
渓魚たちとイーブンに向き合える(最先端ではない)オールドリール。
極力細いPEラインにリーダー。
2.5~3.5gを主体にしたスプーン。

そして、シーズンオフ。自分の中では運命的ともいえる出会いがあった。

(続く)

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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