出会と馬鹿と釣人

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いい加減、寝ないとまずい。
そう思いながら準備を進めているが頬は緩む。

家族との時間を過ごし、寝静まった空気を乱さないように部屋に向かい、まだ見ぬ場所でのキャストを妄想しながらあれやこれやと手を動かす。

初めての河、初めて狙う魚、同行する相手もいつか一緒に・・・と願っていた釣り師だ。踊る心をなだめすかしつつスプーンを選ぶ。
河川 スプーン
先輩方に叱られるのだが、事前情報はほとんど調べない。というよりも知りたくない。持っていく枚数が増えすぎてしまうので、せいぜい使うスプーンの重さぐらいか。

先入観なしに五感が自身に伝えるままの釣がしたい、そう思っている。

合流し、運転する助手席では魚の話もそこそこに、地元であるこの場所について歴史を話してくれる。釣り師と説明したにも関わらず、不思議に思うかもしれないが、こちらとしては想像していたとおりの人物で嬉しくなる。
十人十色の感性があるし、そうでないと面白くない。その中でどこか大切な部分の重なる人、これが長く付き合える人ということだろうと思っている。

あの人とはここが、この人とはここが、それは物事の優先度が似ることにあり、そして変化するのも人であって、合わなくなればまた離れることも自然のままに受け入れる自分でありたい。
河川 アングラー トラウト
橋上の車窓から河を見る、ゆったりと余裕を持って見た先には既に多くのアングラーが立ち込んでいた。

竿も持たず、いくつかの場所を見て回る。アングラーには挨拶と軽い会話、投げる「とき」が来たなら投げる。投げたければ投げる。それでいい。
河川 ヤゴ
ひとしきり見て、しばし竿を出す。1,2時間程度かな、水押しや水底を確認。
大きなヤゴに二人共反応する、豊かな場所。大きさからオニヤンマかと話は弾んで魚無く、昼食へと向かう。

「フライ食べましょう、フライって知ってますか?」
「フライ?揚げ物ですか?」
「・・・まぁ、行ってみましょう!」

それが何を指すのかわからないままに、連れて行かれたフライの店
さいたま フライ
「じゃあ、焼きそばとフライ、藤井さんは焼きそばいらないですか?」
「???・・・とりあえず無しでお願いします」

ん?なんだこれ?
さいたま フライ ソース
「さいたまのソウルフードです」
「全くの予想外です・・・これは知らなかった!」

B級というか、これと焼きそばとは、生まれて初めての体験がこんなところで得られるとは。
きっとあれこれと考えてくれたのだろう心地いい驚き、箸も思わずSwingする。と書いては書き過ぎか。

思うまま箸で割き、くるくるとまるめたり、たたんだりして口へ運ぶ。その合間には、午後のプランをこれまたのんびりと語らう。
ベイトリール カルカッタ
早速ポイントへと移動・・・のはずもなく、連れ去られたのは釣具店。
これまた絶対に入らない佇まい、シャッターは3分の1ほど降りたまま、もうこれ開店してないですよね?と感じざるを得ないその扉をくぐると、新しい出会い。

子供の頃からの付き合いだという、何十年だろう。置いてある雑誌を見せてもらうと1981年発刊。同じ年だ、ルアーの紹介ページには一番最初にスプーンが並ぶ。使ってみたい、愛嬌と不揃いの妙に目を細める。
店に並ぶスプーンも今はもう見られないものが多い、これはまた小銭を握りしめて来てしまうな。

恐れ多いが、釣りの大先輩でもあるその店主の歯に衣着せぬ物言いには笑わせてもらった。
少々まとめるが、釣具店でまさか 「釣りなんて行くんじゃねぇ、10年かけてその馬鹿を直せ!」と言われるとは、気持いい。

しかし、とても温かくって優しい、隠せないんだろう。
なんとなく、写真を撮らなかった。そんな風は吹いていなかった。
水面 反射 日光
店主を会話の肴にして、ゲラゲラと笑いながらまた釣りを再開する。
そろそろか、教えてもらったアクション、手元に伝わる感覚と泳いでいるそのスプーンをイメージしながらキャストを続ける。
スモールマウスバス スプーン
流心を抜けたスプーンを軽く落として巻き上げる、手元に近づいた時に反応。
突っ込むけれど、軽い・・・。何だろうと思ったが、可愛いサイズのスモールマウス。
これも初めての経験だ、ブラックバスは随分と九州で遊んでもらったけれど、スモールはない。
スモールマウスバス スプーン
なるほど、サイズに見合わぬ引き。人気があるのも無理はない。
赤い目に金環、綺麗な鰭、タイガーストライプは見られないが、美しい。
その後しばらくすると、やはり流心と近いシャローで小魚を追っている。背鰭を見せた早く、力強い追い方でこちらのテンションも上がる。本命ではないが、思わずキャストしてしまう。

同行者といえば、流石に手慣れたものでヒットした魚は魚種が違うと言い、姿も見ぬファイト中に針を外すなどこれまた貫禄充分。
スプーン ニゴイ
ローリングするニゴイには苦笑い。
その体には真新しいミノーがついていた。また話題をくれる、愉しい馬鹿な時間。
夕暮れ アングラー
最後のポイントで粘ってみたが、反応はない。
夕暮れに夜の境を伝える太陽と、それでも姿が見たいと生意気な感情でキャストを繰り返す。

 

 

「パ(ダ)チッ!!!」

 

 

重いような軽いような、そんな音を立ててPEラインが爆ぜた。

その0.数秒前。
根掛かりだと思った瞬間からクビ振りに近い感覚が手から脳へ、あ・・・この重さはやばい。この竿だと難しいけど、主導権は握られたくないな。軽めにしていたドラグのため、親指がベイトリールを制御に、そのまま耐える姿勢へ・・・重くなっていく、ブレイク?。

そんな???
あれぐらいの負荷じゃ問題ないはずだ、まだファーストランですらない・・・おそらく、ラインに傷があったのだろう、そうとしか思えない。

しばし放心して考えた結論はそんなものだった。
狙った魚の重さでもファイトでもないとは分かっていたが、顔は見たかった。爽やかに悔しい。
スプーン トラウト
釣り終わった帰り。同行者共々釣り人に捕まり、また話が弾む。
この病気は治せない。その場でもそんな答えになった。

10年あっても、馬鹿は治せないみたいです。 また、伺わせてください。

 

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藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

投稿者プロフィール

渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
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