台風の後

 

空

 

何かに追われるように家を飛び出し、1時間ぐらい経った頃だろうか。

細い坂道の緩くはないカーブに対向車をすり抜け、上り終わるその時、眼前に広がった空。澄んだ水の青と白。

 

幸せを感じずにはいられない。

 

嗚呼、これから「あの場所」で「釣りをする」のだ。

 

木とスプーン

 

前日には台風がやってきて、過ぎ去り、テレビに映る実際の被害と、事象を大きくみせるためだけにヘルメットを着用し、風と雨に打たれたがりな演者が今を伝え、レンズに流されるこれまた「見せかけの雨」という演出を笑ったのはほんの一瞬。

 

「台風の後は釣れますよ」

いつも現場に居る、その人の声だけが頭を上から押さえつけていた。

 

湖 キャスト

 

未だ、そこで虹鱒を釣り上げたことがない。数ヶ月前に訪れた唯一のチャンスもバラしてしまった。

 

今年になってもう何度目だろうか、ほとほと自分にも呆れるが、釣れない時間も嫌いじゃない。

 

先月はトドメとばかりに、はじめて行ったルアー素人にスプーンで40センチを超える虹鱒が釣れたのだから始末が悪い。そんなものだよね、と思いながら賞賛と悪態で応えた。そこに嫉妬が生まれないのは彼の人格がそうさせるのだろう。

 

いい男なのだ、彼は何か持っている。魚も惹かれるのか?

 

ファインテール アルテグラ

 

久しぶりの単独釣行、期待というよりは浪漫を感じることに喜びつつ、思う存分やりたいように攻める。

 

結果から言えば、やっぱり「釣れなかった」。

 

シーズンじゃないことはわかっている、期待した水色ではなかったことも、おそらく、相当な深場にいるであろうことも。それでも行く、期待し、投げる、考える。時折、表情を変える景色に心奪われる。

 

ただ、愉しい時間だった。

 

ファイト ブラックバス

 

黒鱒がせめてもの慰めにと優しく力強い抵抗を見せてくれる。

 

これはこれで嬉しいが、今日は君じゃないんだよね。

 

ブラックバス スプーン

 

近くなったことでその存在と大きさ、美しさをただ静かに見せてくれる山と、光を受けた厚みのある雲がその陰影をいっそう濃くし、その隙間から僅かな光だけを直線的に漏れさせる。

 

山 空 雲

 

納得するまで投げきった。また来るけれどしばらくは他に行くよ。

 

 

藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

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