師走の奥多摩フィッシングセンター

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冬 風景 

 

師走だが、今年は例年のように忙しいと感じない。慣れか、実際に暇なのかを考えるほどの時間はないけれど。

東京で迎える初めての秋、冬の入り口。せっかくだから、田舎では味わえない体験をぼんやり、感じるままに受け止めたくてイベントに足を運んだ。

 

ハンドクラフト展

ハンドクラフト展。

雑誌で見るあの人、あのルアー。フェイスブックでは知り合えているけど、出会えていない友人。

みな愉しそう、好きなんだなと一瞥して分かる。きっと自分もそうなんだろう。

 

第6回ハンドクラフト展 会場

 

お声掛けいただいたり、恐縮しきりながらお話させてもらう。

素直に嬉しく、有り難い。

またこちらからも声を掛ける、いつも見ているけど実際には会っていない不思議な「はじめまして」

 

ベイトリール 渓流福蝉レザークラフト 鑑札fishtailSilverMAIRE ロッドEGOIST ケースハンドメイドミノー

 

渓流のオフシーズンは製作者にとっても販売や交流に忙しい時期になるとみえる。人気があれば尚更だろう、その疲れなのか、前夜やそのもっと前から続く酒のせいなのかは分からないが、若干の疲れを感じさせる方もいる。

個人的にはこういったスタイルは好きだ、昨今の枠や歪んだ常識としての接客でなく、趣味の世界、各々が各々の信条で動いたらいいと思う。売り手も買い手も、相手を選ばなければ互いの満足度はどこか少し靄にかかるような、そんな違和感を覚える。

 

魚華 ロッド魚華 ロッド キャスト

 

イベント運営も大変な労力だと感じる。勝手ながら、願わくば、長く続いてほしい。

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アンサー HOBO スプーン

 

イベントの熱にうなされる数日後、その日は前日から友人が遊びに来ていた。東北の田舎出身だが驚くことに釣りの経験はない。桜鱒を獲ったことはあるけれど、子どもの戯れと言える掴み捕りだった。そんな川、羨ましいばかり。

彼も人生の大きなポイントと思わしき事象に揺られている。自分の頭でさぞ考えたことだろうと、その爽やかな軽さの中にある重厚な葛藤の言葉からは、察するに余りある含みを感じさせられた。

 

よし、興味も持ってもらったし。

釣り行こう。

 

電車 青梅線

 

空は暗く、予報では曇り雨。その通りに降ったりやんだりと師走にならったのか多忙な空、でも冷たい雨じゃない。むしろ人が少ないだろうと勝手に想像して2人電車に乗り込む。

 

近場で、釣れそうなところ。
菅釣りだな、初めて行く場所だけど、何とかなるでしょ。

無責任極まりないけど、野郎2人、これでいい。

 

FGノットをさっさと済ませ、ふたり電車に乗り込む。時間の経過と共に、だんだんと懐かしい田舎の景色に近づいてくる。初めて見るその覚えある色について、互いの地元と比較してみては、頭に絡む感触を言葉にして交わした。

 

多摩川

 

どうやら駅からもそこそこ歩かなければならない、携帯で方角を確認してからは、川沿いを上流へと歩く。

 

近道を考えるなんて勿体無い。

 

あーだこーだと講釈をたれ流しつつ、景色に癒されながらしばらく歩くと、川そのものを人工的に区切った区間が見えてくる。ここか。

一瞥したところ、雨が降るとはいえ、さすがに数名のルアーマンがキャストしている。ここまでは予想通りだ。が、しかし、流れの押しが強い、持って来たスプーンは重いもので3gしかない、不安がよぎる。あまり釣れているようにも見えない。

 

奥多摩フィッシングセンター

 

奥多摩フィッシングセンター

はじめてと伝えると、丁寧に各区間を説明いただき、さらにロッドケース等の置き場まで室内に確保してもらった。中央にはストーブが冷えた釣り人を温めるべく優しい熱を発している。眼下の川面を眺め、来てよかったと思わずにはいられない。

 

初心者 管釣り 奥多摩フィッシングセンター

 

準備もそこそこ、とりあえず投げてもらわなくては。

投げやすさとわかりやすさで2.2gのピンク、DaiwaのAdamを選択、数投しながら狙うポイントとリトリーブを簡単に説明する。透明度の高い水のお陰でよく見えるようだ、これなら釣りにはなるだろう。

 

初心者 管釣り 奥多摩フィッシングセンター

 

センスがいい、たまにミスキャストするがすぐに釣りになってしまった。そうなればさっさと放置して、横目でみながら自分も投げる。正直、自分のタックルは何もしてこなかった、カルカッタにPE1号、リーダーは6ポンドというおよそ管釣りと言えない普段の本流タックル。結ぶのはお馴染みのSatoOriginalアンサースプーン3g、スナップも大きめにして重量を足した。迷いはない、駄目だと思えばリーダーから変えようと考えていた。

 

 

「・・・!」

ん、あれ?呼ばれてる。

 

「なんか釣れました~」

え、竿曲がってる。

 

虹鱒 奥多摩フィッシングセンター

 

ほっといて10分もなかっただろう、釣れてない周りを尻目に、なんなくキャッチ。バレもしない。ビギナーズラックというにもあまりにも出来過ぎじゃないのか。

 

呆気にとられる頭の片隅ではそんな想いに駆られていたが、これは嬉しい。ありったけの賛辞を送る。

 

多分本人はわからないだろうけれど、周りのいわゆる「アングラー」を差し置いて釣ったのだ。3ポンドフロロでラインから視線を外さないような彼らが横にいて釣れず、さっきはじめてキャストしたばかりの人間が釣る。愉快で痛快な自然の流れ。これが釣りだよ、と誰ともわからぬ誰かに言われたような気持ちになる。

 

さて、これで自分も集中できる。

 

奥多摩フィッシングセンター 流れ

 

砂利で足場の良い場所、沈んでいる大きな岩が点在、押しの強い流れの少し外、叩かれていなそうなキワを狙うが、透明度があるため少し沈める必要もある。3gでは正直限界がある、5gでも足りないかもしれない。

 

ややアップ気味に投げ、狙いの岩に通す、反応するが口は使わない。見えてるんだろうし流れのため動きが早過ぎる感じだ。偏光グラスは持ってきていないので、移動しながら通すコースをチェックし、少し距離をおいて場を休める。ダウンクロスに投げ、送り込んで沈めた後は流れとプラスされてギリギリ動くようなスロー。ほら、ね。

 

虹鱒 奥多摩フィッシングセンター アンサースプーン

 

流れに押されたスプーンは自分側の下流岸際ギリギリまで弧を描いて移動してくる。ロッド先端の位置で完全なダウンストリームになる、手前で緩やかな流れ、岩、岸際でも少しだけ深くなるような条件が絡む場所。そこにゆっくり通して喰わせる。

細かいことはよくわからないが、アンサースプーンは左右非対称、同じ動きからバランスを崩すのがとても綺麗で、それに口を使ってくれるのだと感じている。ロッドもずぼらなことが功を奏した、6.9ftのベイトフィネス、ロッド先端を遠くすればそれだけ岸から離れた場所でスプーンを踊らせられる。

 

同じパターンで同じ場所から数匹かけたら、もう満足だ。違うことを試しながら釣れない時間を愉しむ。

 

奥多摩フィッシングセンター 山

 

いつの間にか彼も視線から外れた遠くに陣取ってキャストを続けていた。近寄って聞いてみるとその後も3尾ほどキャッチしていたようだ・・・侮れない奴だ。談笑と賛辞と調子にのるなと大人気ない文句をぶつけ、久しぶりにそのスピニングで釣らせてよ、と竿を取り上げる。

 

あそこには投げてないだろう。スピニングでの感触を味わおうとゆっくり巻いてくる。

 

奥多摩フィッシングセンター

 

・・・!!

 

おー!激しいバイトだ、と思う間もなく身体が合わせを入れている。重みを感じるとすぐにジャンプ。今日はじめて見た。頭の中が空っぽになった。それだけ他の魚と違う美しい飛翔。

 

その後2回、また飛んだ。声をあげて笑っていた、その飛沫が、姿が、また降りはじめた雨や周りの人、隣の友人のことを全てすっかり頭から霧消させてしまって、ただ愉しさだけにつられるがままに独り、と、魚の世界だった。

 

顔も見たいがバレてもいい、もう一度「それ」見たさから竿を立てた、最後も見事、可憐な激しさをそのままに。

 

もうよかった、これで何かが自分から抜けた。しばらく投げていた彼も寒さで退散した後、釣れないキャストをしてはスプーンのその動きだけを見ていた。

 

奥多摩フィッシングセンター ストーブ

 

ゆっくりと室内へ戻る、はじめてのことで疲れた顔をした彼と暖かなストーブが迎える。

 

奥多摩フィッシングセンター 釣りキチ三平

 

壁にかかる矢口先生の画、幼い頃に見た三平のあの興奮にやさしく撫でられる。

 

管釣り タックル

 

時間までいることもない、帰ろう。

彼と今日を振り返り話そう。

 

 

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藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

投稿者プロフィール

渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
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