犀川とスプーン

 

野生化した大型トラウトが釣れる事で、その名が全国に知られている長野県の犀川。

犀川 トラウト
その犀川の約半分のエリアを占める犀川殖産漁協管内においては、
冬季でもトラウトフィッシングが可能である事からアングラーを見かけない日はない。

内陸部の自然フィールドとしては遊漁者数が全国一と言われ、現在も尚増加の一途を辿っている。
自然繁殖した大型トラウトをキャッチしようと、エサ、フライ、ルアーで
毎日のように叩かれているフィールド・・・それが犀川の現状だ。

犀川 アングラー
いつしか、「自然繁殖したトラウトのヒットは困難を極める」と言われるようになり、
初回に訪れたアングラーの大半がノーフィッシュというタフな環境となったのだった。

そんなタフなフィールドにおいては、もはや釣りの美学やスタイルなどは通用せず
「いかにノーフィッシュを回避するか」という現実が多くの釣り人に迫るのは必然となった。
そして、その厳しい現状を打開する有効な手段として、スプーンはいつしか多用されるようになっていった。

ミノーを始めとして数多くのスプーンを犀川で駆使すること2年余り。
地元のルアーアングラーとしてほぼ毎週のように犀川へ出かける自分は、
自然繁殖した大型トラウトをキャッチしようとルアーでの釣果追求の日々を送っていた。

そんな釣行三昧の中で、自分の前に立ち塞がる一つの壁があった。
それは、ワイルドレインボーの大型をどうしてもヒットさせる事ができなかったのだ。
40cm後半までならミノーで自然繁殖型をヒットさせる事ができていたのだが、
対岸にぶつかる流芯のボトムをミノーで効率よく攻める事ができず苦戦が続いていた。

犀川 攻め方
野生化した大型トラウトが居着くと言われる強い流れの流芯・・・
水深2メートル以上はあるその流れのボトムにルアーを沈めるには、
アップクロス側へのかなりの飛距離とそれなりの沈下速度が必要であった。

そして、スプーンをもっと上手く使いこなせれば、50メートル以上はある対岸付近の流芯を
長い距離でトレースして効率よく攻められるはずだと思うようになっていった。

そうした現状にもどかしさを覚えていた2015年のある初夏の夕方。
その時はやってきたのだった。

二つの流れが対岸付近でぶつかる雰囲気の良い瀬があり、
狙いたいのは通常のミノーでは到底届かない50メートル以上はあるポイントだった。

犀川 スプーン ポイント
この日は早朝からスプーンへの反応がよかったのだが、
キャッチしたのは放流系のニジマスと小型ブラウンのみで思うような良型が出ていなかった。

犀川 スプーン アドロワ モーダ
流れを見ながら選んだのは、前年に発売されたばかりのアロドワモーダ13g。
購入してから間もないが、水かみが良く強い流れでも泳ぎが安定していて犀川に合うと気がつき始めていた。

三投目に会心の一撃のようなキャストが決まり、アロドワモーダが下流側の激流に入った瞬間だった・・・

犀川 レインボー スプーン
ヒットの後に激しいダッシュを何度も見せたのは、野生としては完全体のワイルドレインボー。
ガンガン瀬でヒットするレインボーにおいては、高い確率で尾びれの下部が擦り切れている。
しかし、それこそが淡水で最も体力があるトラウトとされる証なのだ。

この犀川では80cmを超えるワイルドレインボーがキャッチされているが、
ヒットしたものの取り込めず逃してしまったという報告は後を絶たない。
1時間以上格闘しても引き寄せられない、ラインが全部引き出されてしまう、
太軸のフックが伸ばされるなど、想像を絶するやり取りが毎年報告されている。

普通にキャッチできるニジマスの多くは成魚放流された個体ばかりなのだが、
自然繁殖型はそれとは次元が違う凄まじいファイトを見せるのが魅力だ。
分厚い流れに乗ったワイルドレインボーと比較すると、
「サクラマスは余りにも引きが弱い」と多くのベテランアングラーが言うほどだ。

まだ2年ほどの経験しかない自分でさえも、20LBのリーダーをブレイクされ、
30LBラインでさえも根ズレであっさり切られた経験がある。

また、ワイルドレインボーの美しさは、数あるトラウトの中でも
サクラマスや遡上ヤマメに引けを取らないほどだと考えている。

犀川 ワイルドレインボー
10月にBUXデイトナ18gでキャッチした自然繁殖型だと思われるレインボー。
これもスプーニングが上達したと実感できる出来事だった。

また、ブラウンも自然繁殖していて、最大で90cmほどがキャッチされている。

犀川 ブラウントラウト
写真は、今年の正月にGURID G4の12gでキャッチした60オーバーだ。
ミノーに反応しないモンスタートラウトが増えるが故に
スプーンを強い武器の一つとして駆使することで、キャッチ出来た大型だった。

流れに鍛えられたブラウンは、湖で繁殖しているタイプと違って
強い引き味と発達したヒレが特徴となっている。
エサとなる小魚の数が多い事から、まるでドラードのようなパワフルな魚体をした個体が多い。

この本州で流れに鍛えられた野生のモンスタートラウトに出会える。

その事は、まさに夢のあるフィールドである事は間違いない。
ただし、休日はそんな夢を追いかけるアングラーで溢れており、
秋の犀川殖産エリアにおいては、入る場所がないと言われるほどだ。

地元のアングラーであっても釣行10回で放流ニジマス1本という釣果をよく聞くようになった。
生息するワイルドレインボーにおいては、ルアーを見切る能力に長けているが故に
その習性に焦点を合わせた釣り方をしないとヒットする事はまずないと言ってよい。
特にスプーニングにおいては、その使い方によってヒットするトラウトのコンディションに差が出やすい。

犀川を特集した雑誌では、放流から大きくなったニジマスだけを載せているケースが多く
その事実がワイルドレインボーをヒットさせる難しさを物語っている。
限りなく水中生物に近い動きをスプーンに演出させないと、
見極めに長けた野生トラウトには通用しないのだ。

犀川釣行に立ちふさがるのは、大混雑、増水、濁り、スレなど様々である。
しかし、技術レベルに応じた釣果が確実に反映される事は間違いない。
そこは、どのポイントにも野生の大鱒が生息している本州では最高のフィールドなのだから。

犀川 トラウト

ハットリ シュウ

ハットリ シュウ

投稿者プロフィール

メインターゲット:レインボー ブラウン
メインフィールド:長野県犀川

自然繁殖したワイルドレインボーに魅せられ、ほぼ毎週犀川に通う。
スプーンに限らず新発売されたルアーは、犀川で試すのが習慣。
野生のレインボーがたくさん泳ぐ犀川にしていきたいと願う。

長野県在住

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