祭りの余韻と

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渓流 岩 苔

 

3月1日がやってきた、9月から半年。もう何年も欠かさない祭りの日。

 

今年は特別な思いがあった。

 

このTailSwingを立ち上げたのが去年の5月23日、やっと来た初解禁日。

そして、今年は個人的にも様々なものが消え、生まれている過渡期であり、複雑な心境になりながらも前を向く心構えができたと感じている。

 

だから、生まれて初めて山女に出会った場所がいい。

解禁前に「どこ行く?」と聞かれた時、そんなことが浮かんできた。

 

渓流 悪路

 

比較的距離の近いその場所は、知っている場所の中で一番行き難い。

道は劣悪、下手をすれば道がないかもしれない。そんな場所、よくもまあ初心者を連れて行ってくれたと思う。

 

当時は普通車で車高も低い、今になれば笑い話だが離合もできない、Uターンもできない。唯一できることは、落石を毎回どけつつ、車底を土や草や石で擦りながら「全然大丈夫ですよ」と開き直ることだった。

 

渓流 アングラー トラウト

 

そんな場所、初の渓流、初の山女。

思い込みがあった、トラウトにはスプーンがいい と。

 

小さな頃に見ていた雑誌のページなのか、ビデオなのか、たまたま見かけた釣り番組なのかは覚えていないが。美しいトラウトの口にぶら下がるシングルフックのスプーン。

 

おそらく、自分の原点。

 

使い方もわからない、ルアー経験は黒鱒とソルトぐらい。岩の隙間を縫うようにフルキャストでダウンに放り込んだ。浮き上がらないようにして巻くだけ、小さな違和感、ファイトもなく、ほんの少しの生命感。それは10cmにも満たない山女。

 

ただただ、関心した。やっぱり釣れるのか、こんなもので。

自分が投げておきながら、勝手なものだけれど、魚の美しさにしばらく見とれていた。

 

雨 山 雫

 

夜中から降り続く雨、午後からは止んでくれると予報にはあったが、かなりの悪路に雨というのは道の心配ではなく、こちらの命の心配もあった。

 

まあ、いい。行ってみよう。

 

待ち合わせたのは同行者の自宅、ところが姿はなく、電気もついていない。電話にも出ない。

30分待って、1人で出発した。

 

トラウト トンネル

 

結局は途中で合流したのだが、ひとり運転しながら、回想にふける。

のんびりやろう、あそこなら釣れる。お土産を数匹確保したらダムに下り、浪漫を追う。

それが解禁日のプラン。

 

渓流 増水 トラウト

 

そのプランは叩きのめされた。

後からわかったけれど、雨の影響か濁りが入り、それが最悪な状況だったようだ。

この場所まで来て、チェイスすらない・・・。

 

ジムニー 渓流 山女

 

まずい、初めての渓流から解禁日はそこそこの数も、サイズも釣ってきたのだ。それが今年になって0匹などあってはならない。

 

早々に思い出の地を去り、ダムより下流のポイントへ。

それでも、心の何処かで「これもいいのかな」と感じる自分もいた。

 

山女 パーマーク スプーン

 

比較的水色のクリアなポイントに入る。そのスプーンをヒラヒラと流れに乗せ、魅せ切った後のU字に軽いアクションを、小さな山女が緩く、早く、卷きつつ流れる水と、動かぬ岩と底色に隠れながら、いきなり食い上げてくれた。

 

釣れなかった時間からの1匹。控え目な、水とパーマーク、安堵の時。はじめて釣ったあの時の感動と似た、けれど少し違う。心をほどいてくれる魚。

 

もうこれで満足してしまった。

 

煙草に火をつける、開高健の、あの文章が浮かぶ

魚釣りのすべては最初の一匹にある。一匹釣ったらそれでいいのだ。
魚の大小にかかわらず最初の一匹に全容があるのだ。
その戦慄も、その忘我も。

数を釣ってよろこぶのは幼稚である。

 

いいとか、悪いとか、そんなことではない。1つの真理ではないだろうか。

 

渓流 山女

 

その後、同行者と数本プラスし、移動する時間を気にしながら3つほどの川を足早に、期待と絶望を繰り返しながら釣り歩いた。

 

結局、釣果はこれまでの解禁日で一番悪い。

別な水系に行った仲間からは、驚くような釣果の連絡があった。素直に嬉しく、喜べた。

 

渓流 山女 スプーン

 

祭りは終わり、今年もトラウトの時期が来た。

 

その景色に、魚に、自分に、会いに行こう。

 

 

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藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

投稿者プロフィール

渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
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