CREEKとThe kaispoon

7月下旬。仕事で山形に行った。

 

滅多に行かない土地。仕事が終わった後で、ホテルの近くにあるらしいプロショップをのぞくため、慣れない道をふらふらと歩いていた。

 

大体、大きな駅前の景色なんて地元の特産物を謳う飲み屋さんの看板の文字以外、全国どこに行っても同じようなものだ。けれど、ここの空気の香りと、湿度と、空の表情は宮崎の夏のそれと随分違っていた。

 

空

 

なんというか、優しい。

 

暑さも、湿度も、日差しも宮崎よりはるかにどぎつくない。さらりとしている。空気にさわやかな透明感がある。

夕暮れの雲は、まるで自分の知る晩秋の頃のような表情。あまり見ることのない美しさに、しばらく立ち止まってシャッターを切った。

 

ホテルから歩いて15分くらいの場所にそのショップはあった。

たたずまいからして、その筋の「におい」がする。はんなりとした期待に心が浮つく。

 

バンブー

 

店に入って、階段を昇ると店主の方と目が合う。軽く会釈して、ショップを見渡す。いい感じだ。ほどなく、会話が弾む。

 

「やっぱり、この辺りは、トラウト釣れるんですよね?」

 

初老にして、まだまだ精力あふれるマスターの遠藤さんがはっきりとした口調で答える。

 

「ええ!すぐそこの馬見ヶ崎川(まみがさきがわ)で、ニジマスとか、ヤマメとか、イワナとか。」

 

ランディングネット トラウト

 

「。。。すぐそこって、どれくらいなんですか?。。」

 

「ん~。車で15分くらいかな。」

 

一瞬言葉に詰まった。

全く、ほとほとあきれて、ほとほとにうらやましい。

 

トラウト 剥製

 

自分が住むところから、トラウトフィールドまでは、どうやっても1時間以上はかかる。それも、まあまあの山道を、落石の危険を感じながら、だ。

 

CREEK 店内

 

山形市には、新幹線の駅がある。そのすぐ傍。15分圏内。でかい駅の、きれいに区画された住宅地のそばで、レインボー?イワナ?ヤマメ?

 

土地の持つポテンシャルが推し量れる。

 

一瞬、嫉妬で心がざわついたが、せっかくの出会い。口元と目元に笑みをたたえることにした。

 

パガーニ メガバス

 

やはり、つくづく、日本列島は南北に長い。北に住まう方々には分からないかもしれないが、少なくとも自分にとっては、そこは果てしない羨望の地なのだ。

 

バンブーロッド

 

マスターの遠藤さんは、元々フライフィッシャーマンとのこと。そのノウハウを活かしてルアーロッドも製作しておられた。じっくりと見たが、とても美しい。試し振りをしたそのアクションには、ある種セクシャルな張りと粘りがあった。

 

バンブー製のハンドメイドなのに、価格は8万円クラス。良心的だ。欲しくなったが、さすがに手持ちがなかった。五角形でバンブーを組み上げてることから、”Penta Creek”という名前。

 

CREEK 店内から入り口

 

「お店、何年くらいやってらっしゃるんですか?」

「35年にはなるねえ。」

 

遠藤さんに教えられて、店の隅にあるスプーンを入れてある引き出しを開ける。

 

年代物が、ずらり。

 

復刻版ではないライトニングウォブラー。

ブルーフォックスのピクシー。

大昔のルーハージェンセン、クロコダイル。

うずたかく積まれたコータック。

 

どれもこれもパッケージが風格を醸し出している。年月の重み。

 

思わず、いくつか買ってしまった。

その中で、一際目を引く1枚があった。

 

The kaispoon

 

ダイワのThe kaispoon。

 

The kaispoon

 

チヌークはもちろん、このパッケージの裏に書いてあるコーホ、ツイスト、クルセイダー、ダンサー、アタッカー、ハーレーなど、ダイワのスプーンは大体見てきた。

 

しかし、これは初めて見た。トリプルフックを外したくないスプーンには、きっと滅多に出会えない。シンプルなデザインのボディの真ん中に白丁貝が埋め込んである。女性向けの可憐なアクセサリーにも見えるし、昔のエジプトあたりの武具のパーツにも見える。

 

ネットで調べたら、それほど値打ち物でもないらしい。6㎝にして7g。薄いボディで天然の貝が使われているので、キャストしてもそれほど飛距離は出ないだろう。アクションがいいかどうかも分からない。そもそも、まだ、もったいなくて開封していない。

 

それでも、ちょっと、既にこのスプーンにはノックアウトされている。

 

もう少ししたら、待望の、心待ちにした、Anglo&companyのparagonが届く予定。新しいタックルで最初に御池のレインボーを狙うルアーはこれだ。格好をキメて日がな1日、キャストし続ける。なんて、想像するだけでたまらなくなる。

 

The kaispoon パッケージ裏

 

裏のパッケージの説明も現代から見ると、ひどく大ざっぱ。何より、このスプーンの説明書きは一切ない。でも、メーカーの想いはひどく伝わってくる。

 

こんな、昭和の非合理的だけど、むやみな熱情は、時折自分をたまらなく惹きつける。

 

ウェーディングシューズ

 

思わぬ出会いは、やっぱり、現場を歩いてなんぼだろう。空気を吸って、空を眺め、町のにおいを嗅ぎ、少し苦労してたどり着く。いい思い出はインターネットだけじゃその後がきっと物足りないはずだ。

 

CREEK 

 

遠い山形のあの空を想いながら。ささやかだけど、大事な喜びをくれたCREEKに感謝したい。

 

Adventure&Fly Fishing in YAMAGATA CREEK (http://www.creek-fishing.com/

CREEK-logo

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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