Full Moon(中禅寺湖)

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朝早くから家庭行事に追われ、最後は地元の小さなお祭りに出掛ける。

ささやかで、ちいさく、それでも精一杯に愉しませようとしてくれた花火と歓声を見終えて、手をつなぎ、歩幅の違いに合わせての帰宅の中、ふいに見上げる。

「満月だね、明るい」

抱っこして、歩きながら見せてみると、月が付いてくるように感じて面白いようで、屋根に隠れては空に飛び出して光る”それ”を見つけては声を上げて笑う。

振り返れば、腕の中にある無邪気と同じように、いつまでも付いてくる月を不思議に想った昔。自身の影から逃れようと戯れた夏の日差し。汗と熱にむせかえる体を畳に転がしては涼を探したあの頃。元気だった人たち。ぱらぱらと夏、幼い日の1枚1枚がまばたき、点滅する。

中禅寺湖 満月

裏腹に正直、焦っていた。22時には目的地へ着かなくてはならない。合流して、さらにもう一人と合流、そして2時には中禅寺湖に到着する予定なのだ。

幸せと想い出の名残を頭からうっちゃり、平然をよそおいながら勢いに任せて選択なしにワレット数個詰め込む。最低限の道具を確認し、それ以外は忘れたならしょうがない。キーを回し、踏み込む。

人を放り込みながら、寝るのも忘れて馬鹿話、釣り話。予定より少し遅れたが、初めて見る湖畔にたどり着く。月明かりと街灯、遠くの山並みを降りる靄から手前に伸び広がる湖面が、水音と陰影の妙を奏でてひどく美しく迫る。

中禅寺湖 トラウト アングラー

2時と聞いていたが、どうやら3時から遊漁券の販売のようだ、並ぶ車には見慣れたステッカーが多数。みんな、お好きなんですね。と我が身のことも忘れ、奇妙な連帯感と殺気の混じり合う時間を軽くいなす。

目指す場所への先行者もなく、すんなりとエントリー。下り降りて腰掛け、煙草に火を入れたなら、開始となる4時を待つ。

中禅寺湖 トラウト

足元から、かなり深く落ちている。目視できる範囲には可愛い鱒とフナが体躯に似合わないライズを繰り返していて朝イチの活性を窺わせる。湖から溢れて見える生命感に期待値も舞い上がる。

今回はHuerco(http://huerco.jp/)の今野ショータ( Shota Jenkins)さんに場所を選択してもらった、随分と前からFacebookでは友人だったのだが、念願の初対面。

引き合わせてくれたのはおなじみの関根氏だが、釣りを通じて色々な人と話し、繋がることができる、つくづく幸せものである。

中禅寺湖 ブラウントラウト ファイト

舞い上がった期待は、数キャスト目にはいつもの調子を思わせる反応のなさに低くなったが、開始30分ほどだろうか。アタリが出てきたと、口々に飛び出し始めた段階で、ひとりの竿が絞られる。

「きたよ」

まだ薄暗い水中で悶える姿、結構良いサイズだ、私はカメラを構え、ひとりはネットを取りに動き、常に落ち着いて動く竿と糸巻きは喜びそのままに、待ち受けたゆるやかな網目へと魚体を誘(いざな)う。

中禅寺湖 ブラウントラウト

中禅寺湖 ブラウントラウト

ブラウントラウト。恥ずかしながら横で釣られたその姿は初めて見る

散りばめられた茶の斑点に黄金のグラデーションを纏う、透き通る黄を帯びた鰭は美しく、金環に縁取られた黒目は睨み、その生命に溢れた顔つき、燦爛としながら精緻に整った野生に惚れ惚れとシャッターを押す。

「やりましたね」

「コレ、釣りたかったんだよね」

中禅寺湖 ブラウントラウト

魚に目を落とす、その光景と完結したやりとりにどんな想いが巡っていることだろうか。

中禅寺湖 レイクトラウト スプーン

中禅寺湖 レイクトラウト スプーン

水はぬるい、反応は湖底に集中している。さて、自分も投げようと竿に手を伸ばしていると右から

「来ました!ヒット!」

連発。また竿からカメラに持ち替える。

終わったと思えば、立て続けに2本目までもしっかり掛ける。

「自分が釣る暇がなくなっちゃうじゃないですか」

などと、軽口をぶつけてみる。嬉しいやりとり。

中禅寺湖 レイクトラウト スプーン

中禅寺湖 レイクトラウト スプーン

撮り終えると、左から

「きました~、小さいですね」

左右で続くヒットに、まだカメラも休ませてもらえない。しかし、何のタイミングなのか、群れでも当たったのか、これだけまとまって釣れてくれるとは想像もしていなかった。そのポテンシャルに感嘆する。

サイズを確認すると、触れずに針を外す。

「表層は水温が高いから、デッド(死)にならないか気になるんですよ」

「こいつら、真下に潜って石に隠れるから、もっと深いところに戻ってくれなきゃ」

「ほら、もっと向こうに帰って、あぁ、そこじゃない・・・お、行った!よかった。」

湖 ナイロンライン 光

なら、釣らなきゃいいのに。というのは認めるが、ナンセンスである。

大いなる矛盾だが、魚も、釣りも大好きなのだ。

数多く触れることで痛めつけて殺し、知り、好きになり、深める中で、傷つけながらも傷つけない方法をどこかに探し、求めるようになるものだ。矛と盾を両手に構えながら、その叶わぬ不殺の期待をいだいて歩くのはとても人間的な行為だと感じないだろうか。

中禅寺湖 スプーン

これで自分以外は全員、安堵に包まれる。若干、視線が痛い・・・。

「やりますやります、釣りますよ」

と、いつものように強がって投げる。勝算はよくわからないが、今このタイミングは間違いなくチャンスだろう。周囲が釣れたおかげで、反応するレンジやアクションはおよその想像がついている。

宮崎にいた頃、御池で覚えたこと、経験したことがそのまま使えると感じ、当時もメインだったサトウオリジナル アンサースプーンの11gをスナップへ。同じようなドン深にスプーンをカウントすれば30は軽く超える。底まで落としたスプーンの抵抗は重く、水中に伸びるPEラインは上向きですぐに泳層を上げることになる。

トウィッチとジャークの間ぐらいの強さで数回アクション、本当はラインの水中修正。もう一度着底までラインを張りカーブフォール。リトリーブとロッドワークを混ぜてみる、いつか読んだスライドスプーンのアクションイメージ画を真似て、また底までカーブフォール。

グッと竿先に重みが乗る。すかさずアワセて、その水中にあるのが魚か、根掛かりか確かめる。

よし、動く。でも軽いな。

中禅寺湖 レイクトラウト スプーン

周囲から祝福の声をいただきつつ、弱々しい抵抗を無視するようにゴリゴリと巻き上げていく。

中禅寺湖ファーストキャッチ、まだ愛らしいレイクトラウト。サイズはどうでもいい、釣れてくれたこと、初めて手元に横たわるその姿に嬉しさが込み上げる。

すぐに深場へ戻ってもらいたい、少し乱暴だがちょっと遠目に投げるようなリリース。無事に見えなくなる後ろ姿を見届けて、腰掛け、煙をたっぷりと吐き出す。

ありがとうございます。

中禅寺湖 レイクトラウト スプーン

次は、同じアクションをイメージしながら、艶めかしくスプーンが舞い落ちる感覚に尖らす。違和感・・・からの数瞬、1秒にも満たないであろう魚とのやりとりを通じてアワセる。

少しサイズアップか、心地よい抵抗に思わず笑みが。

しかし、今回は6.9ftのベイトロッド、真下に突っ込まれるような動きを回避するには長さが足りない。木や岩が点在する場所、腕を伸ばしてなんとか距離を縮めていく。

やはり、途中で何かに潜られてしまった。動かない。ラインをフリーにして、針は外れずに抜け出してくれるのを期待する。2,3回繰り返しただろうか。運良く泳ぎ出たことを察すると、やや強引に巻き上げ、ネットイン。

中禅寺湖 レイクトラウト スプーン

50センチとちょっとぐらいか、よく拝見させてもらうエキスパート達には遠く及ばないサイズだけれど、充足され、満ち満ちる何かが湧き上がる。

握手と感謝、この場所を選択してくれて、ネットを出してくれて、とても自分の魚とは言えず、釣らせてもらったに過ぎないが、それだけにこの時ばかりはあらゆる垣根を超えて繋がれるような気がする。そんな一尾。

中禅寺湖 レイクトラウト スプーン

わずか1時間ほどだろうか、そんな時間が流れると反応がパタリとなくなった。

各人手を変えて探ってはいくのだが、誰ともなく、岩の上にて軽い休息に入りだす。殺気がなくなれば、その足元には大量の小魚が泳ぎ、溜まっていくのが面白い。

白長靴 釣り

ミッチェル オールドタックル

途中で”白長靴の君”こと、成田さんとも合流。もちろん初対面だ、手元を彩るオールドタックル、足元から煌々と主張するその白に巻き込まれ、話はとめどなく、あてなく続く。

中禅寺湖 スプーン

起きては投げ、話しては投げを繰り返し、昼食へと移動。また夕刻に一緒になることを約束し、一旦ショータさんとはお別れ。

昼食後に目指す場所へ着いたなら、またしばしの睡眠にふける。前日から休息などない、15時頃だろうか、目を覚ませばまだ全員寝ていた。

中禅寺湖 スプーン

午後、期待もできたしバラシもあったが、キャッチまでは至らず。気づけば終了となる19時になろうとしている。

まだまだ明るさが残り、これから・・・という雰囲気が漂うのだが、規則は規則。後ろ髪を鷲掴みにされるような気分で引っ張られているけれど、色々な欲を込めてラスト1投。

・・・。

銀山湖のようにドラマチックな展開がそうそう起こるわけもなく、只々美しく暮れていく中禅寺湖に感謝し、巻き終える。

「お疲れ様でした!」

開始早々にいい思いをさせてもらい、その後に訪れた空白はまた埋めに来いということだろう。そう勝手に解釈して車へ戻る。

Huerco ロッド

帰り間際の談笑、そういえば、と。Huercoの竿を触らせてもらう。

まだプロトのようだが、中禅寺湖にマッチする長さ、強さ、そしてなによりフォール感度を重視したモデル。PEラインを軽くつまみ、伝わる感覚はなるほど、の高感度。これならわかりにくいアタリも捉えることができるだろう。ソルトでのライトショアジギングや餌木も操作しやすそうだと感じた。

数ヶ月後にはラインナップされる?ようなことを聞いたが、詳細は尋ねてみてほしい。

中禅寺湖 満月

曲がりくねった帰りのアスファルト、山の間から時折追いかけてくる満月を見ながら今日を振り返り、ゆっくりとまた、まあるく満たされながら、帰路をゆく。

 

 

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藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

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渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
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