Invitation(ランドロックサクラマスvol.4)

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車窓 雨

夜明け前からまとわりつくように降り続く深山の春雨にすっかり浸されたせいで、それほど寒くもない気温にもかかわらずそのぼんやりとした冷気は身体の芯まで染みこんできていた。

ただでさえ寝不足で、しかも医者で処方された薬を飲んでいるのになぜだかこの1ヶ月引かないうずくような歯の痛みが一層気分を憂鬱にさせる。

夜中に起きて一瞬行くことをためらうような体調だったが、何かに引きずられるようにハンドルを握り、ここまで来て、釣りをしている。

湖 椎葉ダム

ちょうど正午頃になると風雨が激しくなり、昼食と休憩を取ることにした。車に戻り、びっしょりと濡れたウェーダーを履いたまま運転席にドカっと座り、暖房とシートヒーターのスイッチを入れ、ほうっと深い深い息を吐いてドビュッシーのピアノアルバムに耳を傾ける。

シートを倒し、窓ガラスに打ち付ける雨粒をぼんやりと眺めていると、やがてキュッと結ばれていた身体の奥はほどかれ、午前中の釣りを振り返ることが出来た。

サトウオリジナル アンサー 14g

唐突だけど、エリアトラウトにはネイティブフィールドにおいても参考になることが山ほどあると思っている。

仲間内にもよく言うのだが、同じフィールド条件、同じ魚の密度で手を変え品を変えして結果を出すことで何が良くて、何が悪いかが見えてくる。

目の前に数千匹のトラウトがいても、手や品が悪いと全く釣れない。

釣れることと釣れないことの差は何か。ディテールを一つ一つ詰めていくのだ。

トラウトたちの生態観察の場としてもこれほど格好の場所もない。表層を落ち着きなくウロウロするヤマメ。決まったレンジに集団でステイしているニジマス。ボトムに張り付くブラウンやイトウ。こんなことを見比べることができるのはエリアしかない。

チェイスやバイトの仕方もそれぞれ特徴があり、それらに対応した攻め方もある。そして何より、スレた魚を攻略するということがどういうことかを体験できることがいい。養殖だからといって彼らにも先祖から受け継がれたDNAがある。エリアで体験したことでネイティブフィールドに還元できるものはとても多い。

この日のテーマは最近ずっと泣かされてきたショートバイトへの対策だった。

事前にyoutubeでエリアスプーニングの動画を何本も見て、脳内シミュレーションを繰り返した。ロッドとラインを一直線に構えること。ラインに変化があった時点でアワセること。その時の手首の返し方。

エリアフィッシングにおいては数を伸ばすためのメソッドが、ネイティブフィールドでは日に数回しかないかもしれないチャンスをモノにするためのコンセントレーションへと繋がる。

アングロ パラゴン

タックルも、いつもはナイロンリーダーの2.5号を1ヒロ半取るのだけど、この日はフロロの1.75号を1ヒロ弱にした。

ずっとこだわってきたフックも太軸のオーナー、サルモのシングルフックから細軸のサクラマススペシャル12号のダブルにした。

低活性のときのチェイスやバイトの仕方は大体分かっていた。フックに触れるだけの魚を徹底して獲る。感度重視のセッティング。

サトウオリジナル アンサー 14g

本当はシングルフックでやりたいのだけれど、最近のこの湖のショートバイトにはかなり苦労させられてきた。そしてスプーンはサトウオリジナルのアンサー14g。カラーはB5。まだ今年はランカーこそ上げていないが、5回中4回はランドロックの顔を見ることが出来ている。

そして、その内の多くはこのスプーンでの結果だった。

ランドロックサクラマス 椎葉

この日もとても渋い日だったが、午前中1回だけ、洋服の裾を指先で軽く引っ張られるような「クッ」というかすかな抵抗があった。すかさず手首を返すと、「ギュンギュン」という鋭いつっこみを見せる。

ネットに納められたのは33~34㎝といったランドロック。

一眼レフで写真を撮ろうと思ったが、雨が止まないのとぬかるんだ斜面で釣り上げたのとでブレたスマホの写真だけになってしまった。良い顔つきをしたヤマメだっただけに残念に思う。

そして雨が小降りになり、午後の釣りを再開し、間もなく、「コッ」という信号が伝わり、電撃フッキングを行った。上がってきたのは8寸程度のかわいいヤマメだったが、思い通りの釣りが出来たことに満足を覚える。

その後、もう1回同じようなバイトがあったのだが、これは乗せることが出来なかった。結局3バイトの2キャッチ。この日はランカーのライズや気配は全くなかった。

リトリーブスピードは2速(ネイティブレイクスプーニング①)のタダ巻きメイン。ミノーイングから想像するとかなり遅いスピードだと思う。手前までチェイスしてきてバイトしそうになる瞬間まで見えたが、やはり人気フィールド、とてもスレているのが良く分かる。

興味を持って近寄り、イライラしてタッチしそうになって、Uターン。

この動きの繰り返しだった。

1回だけ軽くフックに触れたのも見えたが、次の瞬間、悟ったかのように「フワッ」とゆっくり身をひるがえしてディープへ消えていった。この間、手元には何の感触も伝わってこなかった。まさしくエリアで良く見られる光景そのままに。

かと言ってリトリーブを速めると途端に無反応になる。あれこれ試しながらもポイントの移動はほぼ一度もしなかった。それでも1日はあっという間に終わった。

活性が低い時の湖の釣りは確かに辛い面も多いが、そんな中、「釣れた」ではなく「釣った」と思える魚はサイズにかかわらず嬉しい。

山 木々 花

ずっと雨模様の1日だったけど、納竿寸前になった途端にそれまでのうっぷんを晴らすかのような美しい青空が顔を見せる。何だかタチの悪いイタズラをされたような気分になり、1人で苦笑しながら、再びハンドルを握る。

山々 雨上がり

山越えの途中でいくつもの絶景が迎えてくれる。思わず車を降り、シャッターを切った。眼下には深い谷が広がり、きっとヤマメがいるであろう渓流の気配がする。

トラウト カレンダー

気がつくともう4月を過ぎている。解禁という言葉が少し遠くなって、少しぬるんだ風が心地よく過ぎていくようになった。

山 光 影

何だか、山の神々から招待状をもらったような気分になり、嬉しくなる。

「そろそろ渓流においで。」と。

今季のランドロック狙いもあと数回で区切りを付けよう。それまでに結果が出なければまた来年だ。

風に乗ってきたInvitationにはそう想いを伝えた。

 

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松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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