Toby or not・・・

 

今さら言うまでもない名著。開高 健。「フィッシュ・オン」のスウェーデン編84ページの有名な一節。

 

ABU トビー

 

「自然の分泌物(エサ)に自然(魚)がとびつくのはあたりまえである。ただのことである。いくら釣師が仕掛けや合せの呼吸に心魂をそそいだところで餌という決定的な一点では石器時代である。知恵もなく、工夫もなく、また、あまりに容易である。そもそも芸術とは反自然行為ではなかったか。釣りを芸術と感じたいのなら自然主義を断固としてしりぞけねばならない。釣りを生業とする漁師なら話しは別だが、遊びで釣りをする”芸術家”なら、もっと次元の高い、むつかしい道に愉しみを発見しなければならない。少なくとも魚と知恵くらべ、だましあいをして、勝敗を競うようでないといけないのではあるまいか。」

 

 

この日は、焦げつきそうなほどよく晴れていたが、たくさん釣れた。前回大潮で苦戦した場所にリベンジできた。

 

スプーン エクスセンスDC ネイゴ

 

初っぱな。藤井くんがこだわりのベイトタックルにアングロのHOBOスプーンという、およそ青物にはふさわしくないタックルでいいサイズのネイゴを釣った。

 

ネイゴ HOBOスプーン

 

ジグやミノー、ライトワインド系のソフトルアーに比べて、スプーンにはどうしても、圧倒的に動きの”キレ”がない。でも、そのハードルをクリアして得た獲物は、安易に「釣れてしまう」ルアーを使ったときと比べて充足感が違う。芸術性が違う。開高さんの時代と違って、今はエサ以上に釣れてしまうルアーだってある。

 

スプーン ネイゴ

 

もう一人、この日は弟も同行していた。サックスでミュージシャンをやっている。

 

小さい頃はよく一緒に釣りに行っていた。最近は多忙で、あまり釣りには行けてないようだったが、この日は半ば強引に誘い出した。

 

宮崎に帰ってくる前は東京で国内有数のジャズサックスプレイヤーに師事していた。あの有名な六本木の森ビルで定期的にライブをやっていた時期もある。何年ぶりかで幼い頃に戻ったかのように、他愛もない会話を楽しんだ。

 

彼にもネイゴは遊んでくれた。しばらくは入れ食いの時間が続いた。

 

 

そして、藤井くんは、ABUのトビーで、ネイゴを釣った。

幼魚とはいえ、トビーで、カンパチを釣ったのだ。

 

 

夏 海 青 蒼

 

抜けるほど強烈な空のブルーは、そのまま海のブルーへ色と熱を移す。

 

脳天気という言葉があるが、ここまで暑いと雑念も複雑な思考も頭の中で煮沸され、蒸散してしまうかのようだ。

こんな、大人にとっては過酷な非日常は、心を幼い頃に戻してくれる。

 

エバ 群れ スプーン

 

エバ(メッキ)もこの日は上機嫌だった。群れでチェイスしてくる様子は、やはり興奮させられる。まさに「攻撃」という言葉がふさわしいアタックにアドレナリンがほとばしるのを感じる。

 

エバ ファイト

 

ここ宮崎では、初心者から狙える手軽なターゲットだが、ルアーに対してはセレクティブな魚でもある。その数が多く、色んなトライができるため、ルアーフィッシングの経験を積ませてくれる貴重な魚。

 

銀色に輝くエバ 

 

このパワフルで、スピードあふれる鏡のような魚には、たくさんのいい思い出がある。

 

エクスセンスDC 釣り人

 

時合を過ぎて、灼熱の中、まったりと時間が流れ出す。この頃になると、皆、汗といっしょにこだわりも流れてしまって、色々なルアーに手を出すようになっていた。ミノー、ジグ、ソフトベイト、トップルアー。。。

 

夏は脳天気に、童心にかえって、も、いい。

 

移動のときには、かき氷をしゃくしゃくかじり、炭酸ジュースを吸い込むように飲んだ。

 

セイゴ ファイト ジャンプ

 

そして、最後の最後、自分のロッドにこの日一番のバイト。ゆっくりいなしながら、モデルになってもらい、写真を撮った。

 

セイゴと空

 

上がってきたのは40アップのセイゴ。ライトタックルで遊んでもらうには十分なファイトだった。

 

空と林

 

「フィッシュ・オン」の80ページ。ハムレットの有名なセリフをもじったABUの人の言葉。

 

”Toby or not Toby: that is the question”(トビーか、トビーでないか、それが問題だ。)

 

これだけ多くのルアーがあふれる現代だからこそ、スプーンか、スプーンでないか、それをこだわりにするのも面白い。

 

全てのルアーフィッシングの源流で、「釣りは芸術」を表現するために。

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

この著者の最新の記事

関連記事

ピックアップ記事

  1. ニジマス HOBOスプーン
    11月初旬、宮崎の中央部を流れる一ツ瀬川の上流、西米良村に来ていた。ここは九州で…
  2. ヤマメ スプーン HOBO
    渓流シーズンが終わってしまった。 毎週末の早起きと深夜早朝のドライブも来年3月ま…
  3. スプーン ヤマメ
    「ウマいですね。」 行きがけに寄ったコンビニで明日の食糧と水分、今夜の肴を買っ…
  4. ヤマメ 胸鰭
    まだ10代の半ばだった頃読んだ筒井康隆氏の小説に書いてあった一節がずっと頭に残ってい…
  5. ヤマメ 原種 スプーン
    大学生になり、初めて親元を離れて関東で暮らすことになった。 元々、早く一人暮らしを…
  6. 「面白そうだけど、スプーンってよくわからないから教えてよ」 ルアーやるんですね、と話し始めてこ…
  7. 中禅寺湖 レイクトラウト スプーン
    朝早くから家庭行事に追われ、最後は地元の小さなお祭りに出掛ける。 ささやかで、ちい…
  8. 表裏の帯1(魚野川~湖山荘) 夢も出ない暗闇。ん、手首?誰かが握った・・・。 …
  9. 岩魚 山女魚 原種 DNA
    記録に残るような大物トラウト。 一生忘れることはない美しいトラウト。 私たち…
  10. 渓流 山女魚 スプーン バイト
    身体を悪くして随分時が過ぎた父親に話しかけた。 「ほら、小さい頃よく連れていっ…
ページ上部へ戻る