消えない蒙古斑

 

ストレーン ワッペン

 

1980年代中頃にかけて思春期真っ盛りだった自分にとって、このロゴには何とも言えない思い出が詰まっている。

 

デュポン社のストレーン。ダイワのカタログにこれでもかと言わんばかりのキャッチフレーズでアメリカのバスプロが一緒に写っていたのを覚えている。

 

あの頃、近所には確か、狩野釣具店というおじいさんが一人でやってた小さな小さな店があった。

店内にはミッチェルとか、アンバサダーといった舶来のお洒落なギアが陳列され、大きなガラス張りのコルクボードにはレーベルミノーとか、ラパラとか、ホッテントットやウイグルワートなど、当時の人気ルアーが格好良く並べて飾ってあった。

 

ウイグルワート

 

もちろん、なけなしの小遣いでそんな高いものは買えなかったから、こみあげてくる衝動を押さえつけてはブレットンとか比較的安価なものを1個ずつ、毎月ちびちび買って、ときどきカタログをタダでもらってはため息まじりに、くしゃくしゃになるまで何度となく眺めていた。

 

憧れのストレーンのラインを初めて買ったのも狩野釣具店だった。紙の箱を開けたら、そのナイロンラインは何だか粉っぽくて中から独特のにおいがただよってきた。自分は少年ながらにそれはきっとアメリカのにおいだと思った。

 

フィルソン ベスト

 

今年も解禁が間近だ。去年買った念願のフィルソンのベストに合うようなヒップバッグが欲しいとずっと考えていた。ベストのポケットには釣り関係の道具だけを入れたい。だから、財布とか、タバコとか、チョコレートとか、その他諸々のものを入れるためにもう一つ欲しかった。

 

フィルソンはどう見てもオールドアメリカンな風合いで、自分もそんな感じが好きだから、やっぱり布とか皮製がいいよなあ、でもこれにまたフィルソンの小さいやつとかだと少ししつこいしなあ、、、などと妄想する日々を過ごした。

 

ヒップバッグ トラウト

 

そしてある日、近所のホームセンターの職人さんコーナーで、ふとしたときについに見つけた。

随分前から、ストレーンのワッペンは見つけていた。何か機会があればきっと買おうと思って、その”OLD FISH”というサイトで在庫状況は確認していた。

 

バッグの金額は1,700円くらい。ステッカーは2,000円。送料とか諸々入れると3,000円は超えたが、バッグを買ったその日に迷わずクリックした。きっとこの組み合わせは、いける、と。

 

フィルソン ワックス

 

帆布っぽい布に合皮のシンプルなバッグだったが、フィルソンのワックスを手で溶かしてぐりぐりと塗り込んだらそれなりにユーズドのような雰囲気が出てくる。もう、じわじわと嬉しさが止まらなくなってきていた。

 

山女 パーマーク 背中

 

あの頃と違って今はトラウトにドップリだが、それはきっと他の釣りと違って、トラウトフィッシングにまだ他の釣りのような合理主義がそれほど入り込んでいないことも一つにはあるのではないだろうか。

 

釣れればいい、ってもんじゃない。

 

そんな何かがまだそこには、ある。あの頃見ていた少し不器用だけど、楽しげで、かっこよくて、美しいアングラーの背中。

 

OLYMPUS O-MD

 

もしかしてそれは少年だった自分が、あまりに純粋な眼で作り上げた美しい幻のようなものだったのかもしれないけれど、少なくともあの頃の自分に背中を見せられるようなアングラーでいたいとは思う。

 

カヤック 湖

 

子どもの頃は決して行けなかった所へちょっとだけの寝不足と筋肉痛を覚悟して冒険旅行に行ったり。

 

渓流 花

 

例え天気の悪い日でも、ちゃんとレインギアを着込んで、名前も分からない花の美しさに少しだけ見とれてみたり。

 

OLYMPUS TG-2

 

デジタル一眼レフは持ち運びに不便だから、などという理由でサブのカメラを買って、美しいトラウトの水中撮影とかを目論んでみたり。

 

トラウト タックル

 

・・・などと、つれづれなるままによしなしごとをイメージしながらバッグにワッペンを一針一針この手で縫いつけた。

 

中学生の頃、くりくりの丸坊主だった自分の幼く、甘酸っぱい美学のようなもの。でも、これからもきっと大事にしていきたいもの。

それをこのロゴに込めて。消えない蒙古斑のようにたずさえて。あのときの少年といっしょに。

 

そして何より、

 

トラウト 仲間

 

こんな話しで、だらだらと夜遅くまで酒を飲み明かせる友人たちがいる。

これが、一番いいことなのかもしれない。

 

もうすぐ解禁。半年間の夢の始まり。

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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