Our Regulations

この時期

毎年のことながら、既に解禁した場所から沸き起こる歓声がSNSやブログから聞こえてくる。わざわざ地元ではない場所へ旅立つ強者も散見される中で、今か今かとXデーを待ちわびる写真や文や練習模様がその茹だってもうもうとした熱意を貯めに溜めて、10代半ばの性欲のような爆発前の様相とすら感じられて軽い恐怖(狂浮)だと言っても差し支えないように思える。

禁漁というこの狭い水辺に設けられている決まり事がもたらしてくれることは相当に大きいとみえる。会うなと言われるほど会いたくなるのが人情。過去の透き通って輝いた歓喜の時間を近く遠く目を細めて眺め、新しい戦術をあれやこれやせっせと考え抜き、えりすぐりの装具・道具達は新調されたり、くすぐるように繊細な整備を施したあげく心を砕いた衣装までも纏わせたりするのだ。じっとりとそのすべてをひとつひとつ舐め上げ、酒の肴にしたりして、早く早くと彼、彼女らが訴えてくる焦燥とそれらを感じられる自身への喜びに心震えていると、いよいよ正気の形を保てなくなる。

この溜まり澱んだガス抜きしなくてはいてもたってもいられないと、管理釣り場へ走り、他の釣に精を絞ってひとときの慰みでできた穴から噴出させてみるも、やはりあの場所ではないということを突き付けられて穴は閉じ、空けられた隙間へはもう溜まっていくのを感じられ甘くしたたかに組み伏せられるのだから、無言となるしかない。

そんなこんなで日々をやり過ごした先にその日、Xデーを迎え、約半年にわたる悲喜の舞を躍ろうと舞台へあがりこむ。

ここまで没入、投身している御仁はそう多くないでしょうが、程度の差はあれ思い当たるフシがここを読むような大兄、紳士、淑女のみなさまにおいてはあると思われます。私にも。

そんな中で忘れられそうになるのか、元々考えてもいないのか、熱情の湯気の中で粗雑に扱われているのではないかと訝しんでいるのが己へ課すレギュレーションについてだ。ルールより強い意味合いを持つ。その”有”と”無”が釣美の破片なのではないかと考えている。
意味の違いはインターネット辞書から引用してみたい。

”ルール
(社会・会などで秩序・機能を維持するため相互に守るべき)規則、規定、ルール、規則、(科学・芸術上の)法則、方式、(数学上の)規則、解法、常習、習慣”

”レギュレーション
取り締まり、規制、加減、調節、調整、規則、規定、条例、法規”

遊漁規則もレギュレーションであるが、ここでの話は手前で手前に課すものだ。ある種のコダワリと言い換えてもいいだろう。武士は食わねど高楊枝のやせ我慢のものから、釣歴を木目のように重ね成長した結果としての自然発生、心赴くまま設定されたものもあるだろう。ナンセンスであろうがなかろうが他者の評価など全く関係ない。あなたの、あなたによる、あなたのためだけに設定されたしなやかで強靭で、不可侵な決まり事。これをどこか気配として漂わせ、薄く香らせる釣り人はわかる人にはひどく魅力的に見えるだろう、なんとなくご理解いただけると思う。

私の場合は唯の偏屈に過ぎないが、一例として挙げさせていただくとフックはバーブレスのみでシングルに限る。ルアーならスプーン、フライのみの釣、ただし尊敬の対象となる方が勧めてくれたものに関しては例外でその際は素直に言われたまま鵜呑みにして実行すること。これだけである。その他いろいろなコダワリがあるが、まだ己のレギュレーションとして育ち切っていない。そしてこれも衝撃を受け、叩かれたり、揉まれたりしながら変化していくのだと考えている。

何よりもこの手前勝手の約束を考えることは楽しい作業になる。魚と自身はもとより取り巻く環境、状況、好き嫌いなどをあれこれと煮込みながら、灰汁を捨て、整え、結果として澄んでいながらふくよかな出汁を仕立てる感覚。当然そう上手くはいかないので毎回ゴミ箱行き手前のような味を舌に乗せ、いやがる喉の奥に運ぶのだがそれも糧として何かの拍子には目を閉じ歯頚の隅々へわたらせてから、惜しみつつ飲み干すようなものを濾すことができる。過不足なく自己へと響く出汁があれば、その先は何を入れても旨いに決まっている。困るのはその自己はたやすく変形、変質することぐらいか。

時代を反映して、公共の電波や紙面で踊るような理屈はあくまで知の一片でしかない。蒸留した先にある各人、個としての結果を胸に秘めたいと思っているし、そのほうが愉しさと共に美しさも手に入れられるのではないだろうか。

機会があれば皆様のレギュレーションを教えて下さい。
お聞きできるのを楽しみにしています

藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

投稿者プロフィール

渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
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