そして聖地へ

 

アンバサダー 開高

 

AM9:00

 

久しぶりにロッドの根本までへし曲げるレインボーのファイトを堪能し、ひとしきり写真を撮り終え、水際に散らかしたタックルを片付けようかと思っていたそのとき。

 

砂浜の曲がり角からふらりと現れた年輩の方を見た瞬間、一気に親近感が湧いた。

 

開高さんにそっくりなのだ。

本人の横顔の写真も撮らせてもらったが、肝心のサイトに載せていいかどうか聞くのをトンと忘れてしまったので、タックルの写真のみ。

 

落ち着いたたたずまい、独特の声色、首元の赤いスカーフ。映像でしか見たことはないが何から何まで似ている。

手元には古いアンバサダー。年季の入ったダブルハンドルのロッドグリップはFuji。もうたまらない。

こちらから話しかけると、ぽつぽつと、しかしロマンあふれるものすごい話しを聞かせてくれた。

 

「20年くらい前かな、あそこのポイントでメーターオーバーのレインボーを人が釣るのを見たんだよ。」

 

「メーターオーバーですか!?」

 

「うん。都城市、いや、宮崎市の人だったなあ。」

 

「ルアーは何だったんですか?」

 

「スプーンだよ。」

 

「僕も池田湖(鹿児島県)でメーターオーバーを釣ったことがあるよ。ウェーディングして釣ってたから、僕の足を杭かなんかと間違えて、股の間をくぐりぬけようとしたなあ。」

 

「すごい話しですね!」

 

「昔は、御池にブラウンを福岡の人が放流したこともあったんだよ。」

 

「あ!あの噂も本当だったんですか!?」

 

・・・。

 

9月で渓流シーズンも終わり、これからはここに通い詰めることになる。
宮崎県高原町にある神秘的な湖、御池。

 

御池 朝焼け

 

AM5:30

 

夜明けが見たくて早めに御池に着く。

 

日が昇る直前が一番神秘的だ。いつ見ても吸い込まれるように美しい。

 

御池 山 朝日

 

御来光と呼ぶにふさわしい景色。年末まではここで、釣れない釣りを楽しもうと思っていた。このときは。

 

御池 ヨシノボリ

 

御池 ヨシノボリ

 

足元の岩場には小さなヨシノボリがびっしりと張りつき、シャローエリアには小魚の群れが泳ぎまわっている。

 

いつもは杭になって一つのポイントに張り付くことが多いのだが、この日は意識的にランガンしてみた。

 

めぼしいポイントを1つ、2つ、そして3つ目。

 

虹鱒 尾びれ 御池

 

AM8:00

 

過去に実績のあるポイント。フルキャストしてボトムを取る。約30秒。

 

御池 虹鱒 アンサースプーン

 

ルアーはサトウオリジナルのアンサースプーン11g。稚魚放流の実績のあるアユカラー。というより、最近はどこでもこれをパイロットルアーにしている。

 

使いやすく、よく魚を連れてきてくれる素晴らしいスプーンだ。

 

ボトムを取ったら柔らかいフリップを7~8回。その後テンションフォールでボトムまで。これを2回繰り返す。アクションで誘うのと、ラインスラックを取ってボトム付近をトレースしやすくするため。

 

それから、2~3回軽くフリップして底を切り、タダ巻き。10回巻いたら柔らかく、軽くフリップを1回だけ。一瞬の間を作ってまたタダ巻き。

 

ねらい通りのあたりで、「ガツッ!!」。

 

きた!!

 

御池 虹鱒 レインボー

 

とにかく、ひく。強烈だ。

 

ここまで今年はヤマメばかりやっていたからだろうか。ソルトの魚とファイトしているようだ。

 

御池 虹鱒 パラゴン レインボー

 

ラインシステムの限界近くまでロッドが曲がる。しかし、ドラグを締めすぎているせいか、ラインが出ない。

レインボーは口が柔らかい。突っ込みも激しいから、ドラグがきついとダメだ。

 

それでも何とかいなし、ネットイン。36㎝だった。

 

バスではないが、ポットベリーと呼ぶにふさわしいぽってりとした腹。撮影中に5~6匹吐き出したのは極小のヨシノボリだった。

 

この湖にしては思いもかけない早い結果。

 

御池 虹鱒 レインボー

 

ここのレインボーはとにかく釣った後が弱い。水から上げるとリリースが難しくなる。ゆっくり蘇生させ、優しく優しく扱って何とかリリースできた。

 

キャッチアンドリリースをすることはセンチメンタリズムではない。この子が60、70オーバーになって、また自分と戦ってくれることを願ってやるのだ。

 

どうか、それまで元気で、と願う。

 

御池 アングラー

 

AM10:30

 

アンバサダーの方と別れて、次の実績ポイントに向かう。

1投、2投し、同じように探る。

 

間もなく、「ドスッ!!」と強烈なバイト。明らかにさっきより大きい。

 

どうなってるんだ。今までの御池なら1日粘ってレギュラー1匹、ということがほとんどだったのに。

 

ジリジリと寄せてくる。自分の後ろでは3人組のバサーが見ている。

岸から10mくらいのところでどてっ腹を見せて大胆に、何度もローリングする。

でかい。明らかに50オーバーだ。

 

 

しかし、それよりも、ローリング!?

もしかしてサクラ!?

 

 

次の瞬間。

 

「プンッ」と重みを失う。先程の話しが盛り上がっていて、ドラグ調整を忘れていた。多分口切れだったと思う。

 

湖面 倒木

 

その後、ドラグを調節して別のポイントでまた大きなバイト。ドラグが一瞬うなったが、フッキングしなかった。

 

残念だったが、これほどの頻度でのコンタクト。

あまりにも予想外な午前中だった。

 

この後、神社の方へ足を向けると、とあるスペースだけとても涼しい空間があった。何かに抱かれるように15分くらいうつらうつらとした。

 

御池 虹鱒 スプーン パラゴン

 

PM 1:30

 

場所を変え、観光客が多くいる皇子港周辺に移動。電話にヘッドホンをしながら午前中のことを藤田くんに話しながらキャスト。

 

全く釣れる気はしていなかったが、ここでもヒット。思わぬ実況中継となってしまった。ラインが岸に係留してある船底にこすりそうになり、電話口で「やべえ、ヤベエ!」と連呼してしまった。

 

かなり強引に寄せ、観光客に囲まれながら上がってきたのは42㎝。

 

御池 虹鱒 リリース

 

とても残念だったが、このレインボーはリリースが出来なかった。目の前でみるみる生気を失っていき、やがて動かなくなった。

 

今でも色々と確実にリリースできる方法について考えている。

 

御池 湖畔

 

御池 虹鱒 スプーン

 

PM 3:00

 

そして、時間的にラストのポイント。釣れればもうけものくらいの感じでキャストしたが、数投後にヒット。

ヒットしたポイント周りにストラクチャーがなく、ドラグ調整もジャストだったため、とても楽しく、エキサイティングなファイトができた。

 

 

パラゴンの7.4フィートが満月のような弧を描く。

 

3ピースそれぞれのセクションが違うリアクションをするのが分かる。

 

ティップセクションは悲鳴を上げ、ミドルは歯を食いしばり、バット部がそのタフな本性を現す。

 

オーバーホールし、チューニングを施し、ウッドノブでドレスアップしたお気に入りのブラディア2500からは時折「チリリリ!!」とドラグ音が響き、滑らかにラインが出て行く。

 

 

今でもその感触が手に残る。悦楽の波が押し寄せる、至福の時間だった。

 

38㎝がくれた幸せ。

 

御池 虹鱒 レインボー

 

繰り返すが、今まで御池でこんなことはなかった。初めてだ。

 

しばらくは通い詰めたいと思う。

 

御池 山々

 

前から目標・ビジョンがあった。

 

 

それは、この湖を南のトラウト聖地にすること。

 

 

芦ノ湖や中禅寺湖、北海道の有名な湖に比べるととても小さい湖だが、魚を育むキャパシティはきっと十分にあるだろう。

 

足場もそれほど悪いところはない。初心者からエキスパートまで挑戦しがいのあるフィールドだ。

 

パラゴン ブラビア スプーン

 

そして、あの開高さんが描いたダンディズムを体現するような大人が集い、その背中を後輩たちが見て、ゲームフィッシングの文化が受け継がれていく。

 

そんなことに関わってみたいと思っている。

 

 

~ Tackle Data ~
Rod : Anglo and Company Paragon PR743
Reel : DAIWA BRADIA2500
Line : VARIVAS  スーパートラウト アドバンス マックスパワーPE 0.6号
Leader : ナイロン2号
Spoon : サトウオリジナル11g(GKY), 同7g(グリーンアワビ)
Hook : 自作(オーナー社 サクラマススペシャル11号をタイイングして製作)
Camera : OLYMPUS OM-D EM-5

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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