梅雨入り間もない6月初旬の週末、宮崎希少なトラウトアングラーM氏から、宮崎県最後の秘境、Sダムへのサクラマス調査提案が飛び込む。M氏の新しく購入した、愛車を駆っての釣行とあって、先の予定を丁重にお断りし、OKの即答。
前回の釣行時に凍えた体を、彼の1杯のコーヒーに救われたため、今回は、私が自らダテーラ スウィート イエローを焙煎し、恩返しを計画。サクラをネットに横たえ、ドリップコーヒーを戴いているシーンを想像しつつ、思わず、にんまりしながら、ハンドルを回す姿がそこにあった。
同じ宮崎県というのに、出発時間は午前1:30、狂人的なスケジュールであるが、サクラマスへの想いに、なぜか睡魔は感じられない。M氏の新しい愛車はH社のベゼル、お洒落な内装に、全く疲れを感じさせない走りに軽快なSAX JAZZが流れ、快適なドライビング。
これぞ、まさに男のクルマ!
お互い、趣味が似ているもんで、会話もはずみ、あっという間に秘境は目前に迫り、空は薄っすらと明け、幻想的に橋が現れた。
幾本かの橋を、オトコのベゼルは駆け抜け
道沿いの滝が、アングラーの心を掻き立てる
ついに秘境ダムへ、はたしてどんなサイズのサクラが泳いでいるのだろうか。
まずは、ダムインレットを探ろうと、ポイントにむかったが、一足先に、久留米ナンバーのアングラーがキャスティング中。そのあたりでは、かなりのサイズと思われる魚のライズが確認されたが、迷惑をかけないようポイントを外して、上流部へ異動、しかし、ヤマメの反応のみ。
再び、インレットにもどり、先のアングラーに尋ねると、朝一にて、強烈なバイトがあり、リーダーからぶち切られたと、かなり興奮気味に説明してくれた。
我々も、思わず、対岸に車を走らせ、道なき道を駆け下り、湖畔に辿りつき、キャストを重ねた。
すると、突然、M氏のロッドに強烈な衝撃が、そして、魚体がジャンプ 「す、すうじいさん、き、きましたこいつは、まちがいありません」 私は思わず「やったね、遥々来た甲斐あったね!」と叫んだ。
それば、まぎれもなく、50cm近い「こいつ」だった。
私は「少し、口の形と、色が違うだけじゃん」と慰めたが、聞き入れてくれなかった。
取り合えず、焙煎したコーヒーを入れましょうと言うことで、M氏への借りは返すことができた。
M氏は、満足そうにコーヒーをすすっていた。
ワン オア ナッシングの釣行はこれからも続くのである。