河川に溯上する最大級の魚、サケのルアーゲームを紹介したい。
山形県は、2002年寒河江川を皮切りに、早くから県内河川に溯上するサケを「有効利用調査」という目的で限定的に釣り人に解禁してきた。
・寒河江川:2002年~
・小国川:2007年~
・鮭川:2008年~
・月光川:2004年~2010年以降休止
私は、03年の寒河江川をきっかけに10年以上遠征してきたが、捕食しないサケをルアーで狙う難しさと、河川で釣れる最大級の魚とのファイトはとてもスリリングで病みつきになりいまだに飽きずに毎年山形まで遠征している。
日本国内では、忠類川(北海道)や奥入瀬川(青森県)、木戸川・請戸川(共に福島県)などがサケ釣りを早期から釣り人に開放してくれた。
※残念ながら2011年の東日本震災とそれに伴う原発事故の影響で木戸川と請戸川の2つの大事な釣り場を失った。
昨今新潟県や茨城県の複数河川でもサケ釣りが解禁されるなど全国で「有効利用調査」が拡大されて楽しみが広がっている。
北米のように遡上したサケを河川内で釣る「ゲームフィッシング」が今後盛んになることを期待したい。
河に溯上するサケのスプーンゲームの楽しさを簡単に紹介しよう。
●溯上したサケは捕食しない
サケは誕生した河をくだり海に出て、ほとんどが3~4年で回帰する。
溯上前の産卵期の2~3カ月前から餌をとらなくなり、河川に入ってからはもちろん一切捕食せず、体内に蓄積したエネルギーで上流に溯上するよって、ルアーへの反応はリアクションバイトが中心でルアーを追い食いをすることはまれ。
鼻先1m以内にルアーを通し、イライラさせて威嚇や口で払いのけるリアクションを誘発させる釣りが中心。
バイトを誘発するには、アップやアップクロスでなくダウンクロスにキャストしたルアーがU字にスイングさせサケの鼻先をかすめないと釣れない。もしくはダウンでルアーをサケの鼻先に流し込みトゥイッチング、ジャーキングでリアクションを誘発させるのが有効。
ちなみに
餌師達はサンマの切り身で釣っているが、捕食でなく強烈な匂いと魚皮の輝きに反応するのではないかと思う。
●サケのコンディションの違い
魚屋で見かけるサケはみな銀色しているが、産卵期を迎える時期になると他の鮭鱒族と同様に婚姻色のサビ(ブナ)が入る。
河川でサケ釣りをしているとブナの強い魚と銀毛がかっている魚、ヒレがボロボロで痩せて弱弱しい魚(ホッチャレ)とまるまる太ってヒレピンの魚・・・同じ河川でもコンディションの違うサケがいる。
銀毛が強い魚は産卵にむけてまだ完熟していない魚体で、産卵場近くで成熟するのを待つ魚。
コンディションのよい魚は流芯下に定位できるが、ホッチャレは流れの弱いところで体力を温存する。
流芯か流芯脇をを狙うことでコンディションのよく体力のある強い魚と勝負することができる。
●溯上タイミング
サケを河川で釣るには管轄漁協に「調査採捕」従事者としての応募が必要だ。釣行3~4か月前の夏から調査日(釣行日)を申し込むため、最適な溯上タイミングに該当するかわからない。
漁協によっては過去の溯上量統計を取っているので、相応しい日付のアタリをつけることができるが、季節の推移、海水温、天候、潮汐などさまざまな要素が重なり溯上のピークがいつになるかを正確に予測することはできない。
溯上タイミングがピッタリあっていると川面にサケの背びれがひしめく程の規模となり、スレがかりさせないのに一苦労するほどだ。
溯上量が少ないときには夜明け前の薄明かり時から午前中に魚が上流へ移動する。
溯上量が多い時は、昼夜問わず活発に溯上する。下流から次々と魚が入り、密度が高まると遡上が促されるようだ。
●ルアートレースは丁寧に
大型だが繊細な攻略をしないとバイトを誘発するのは難しい。
元気な魚は流芯、流芯脇のボトム付近に着く。
サケの鼻先かやや上にスプーンを通す、あるいは定位させるようにレンジコントロールする。
ボトムから20~40cmのイメージ。
腹ヒレにスレ掛りしているときはレンジが下過ぎなのかもしれない。
追い食いすることはあまりないので、鼻先からの距離は30cm、最低でも50cm以内にスプーンを送りこまないとなかなか釣れない。
流れの中でいかにルアーを正確にサケの鼻先に送り込むかが釣果の差となって現れる。
スプーンだけでなく、シンキングミノーやスイミングジグなども有効。
詳しくはブログ 鱒ノ道:http://ameblo.jp/nobimage/
こちらをご覧いただきたい。
●流域別の攻め方
漁協により調査区間が異なるため、流域別の攻略方法もかなり異なる。
1.河口域のゲーム(月光川:河口から1km/木戸川:河口から0km)
溯上間もない綺麗な魚体のまだルアーにスレていない魚が獲れる。
最下流部は流れが緩やかで特徴がなく魚の付き場が把握しづらい。
流れが対岸に寄っているなど流芯がつかめるとサケを狙い撃ちできるものの、ゆっくりとした流れではヘビースプーンだとすぐにボトムをとってしまうので釣りづらい。
【月光川】
流程が短い河川で、止水かと見まがうばかりのゆっくりした流れ。
サケの付き場を把握するのが難しく、クロスからダウンクロスでゆっくりスプーンをスイングさせ広くサケをサーチする。
【木戸川】
河口付近は護岸されており足場も良いため、釣り人が過密。
ポイントのキャパシティに対して釣り人が多く、一層隣の釣り人との距離が近く、管理釣り場的な様相を呈するためストレス過多で、苦手な釣り場だった。
2.中流域のゲーム(鮭川:最上川河口から約50km/小国川:最上川河口から約60km)
瀬や淵、流れ込みなどのポイントの変化に富んでおり、サケの付き場も多様。色々なルアー、テクニックを駆使したゲーム性の高い釣りが楽しめる。
綺麗な魚体でファットな大型魚に出会えるチャンスもある。
【鮭川】
いわずとしれたサクラマスの銘川。
調査区間も長く、さまざまなポイントがたくさんあり、毎年サケの付き場を探しながら釣る楽しみがある。
最大のポイントは泉田川の合流点で餌師が大挙しているが、他にもサケの付き場でルアーに相応しいポイントはいくらでもある。
大水が出ると水が高く収まるまで時間がかかる。20g以上のヘビーウェイトのスプーンは必携だ。濁りもなかなか解消しにくい。
【小国川】
アユの銘川。川幅のせまい規模の小さな最上川の支流。調査区間も短く対岸に流れが寄っている中央部の流芯が主なポイント。
18gを基本に流れの強い時は20g超を使うが、土砂の堆積が多い年はボトムをとらぬようにコントロールに気をつける。
3.上流域のゲーム(寒河江川:最上川河口から約130km)
河口からの距離を考えると驚異的な生命力を感じる。
痩せている魚(ホッチャレ)が多いが、時として大型の綺麗な魚も交じるため油断禁物。
【寒河江川】
調査区間は広く、多くの釣り人を受け入れるキャパシティがあるものの、最上流部のウライ下のサケが貯まる場所が人気でひとも集まる。
しかし、区間内にはいくらでもポイントが点在しており、サケの付き場を見つけサイトフィッシングするのが釣果をあげるコツ。流れが強いためスレ掛かりすると50mも走られるのはザラで、取り込みに苦労することも。
日本でも「サーモンフィッシング!」
アラスカやカナダのキングサーモン、オホーツクやカムチャツカのシルバーサーモンもかなりの醍醐味あると思うが、日本でもチャムサーモン(シロサケ)のファイトを楽しむことができる。
レギュレーション内で半日もファイトすれば、上腕が筋肉痛になることは必至。
一度味わったら忘れらないサケとのファイトを国内で身近に楽しんでみてはいかかだろうか?