佳い(よい)知らせ

オリンパス O-MD E-M1

 

毎年、正月休みが明けると仕事が多忙になる。

大体、2月の下旬までほとんど休みを取ることなく働き、一息つくと解禁が目の前、というのがいつものパターンだ。

 

今年もそんな毎日を送っていたが、ある日、昼休みの時間を見計らったかのように、携帯が鳴った。

御池のボート屋の主人からだった。

 

「釣れ始めましたよ!ボイルやライズもあるし、40㎝近いのも上がってます。」

 

去年の後半は全くと言っていいほど生命反応がなかった御池だったが、それでも何か佳い知らせがあったら、電話をくれるようにお願いしていたのだ。彼の心配りに心底うれしくなった。

 

御池 湖畔

 

2日後、いてもたってもいられなくなり、ちょっと強引に休みを取って湖畔に立った。何よりまず最初に彼と、ぶっきらぼうだけど親しみと優しさのこもった一言二言を交わし、ゆっくりとタックルをセットした。

 

御池 水面

 

この日の御池は前日までの暖かさとは打って変わって、どろりとした陰鬱な雲が凍てつくような空気を運んできていた。アングロのパラゴン7.4ftに取り付けたセルテートのリールフットをつかむと軽い痛みのような冷たさが伝わってくる。

 

パラゴン セルテート

 

それでも、随分久しぶりにいるべき場所に還ってきたタックルを眺めていると凝り固まっていた心が、周りの寒さとは逆にゆっくりと熱を帯び、ほどけていくのを感じる。

 

仕事柄もあって、様々な職種の方々と話しをする機会をいただいている。その中には釣り好きな人も多い。大抵、通り一遍なあいさつ程度の釣り談義を交わした後、自分は心にブレーキをかけてしまう。

 

何故、鱒釣りか。何故大きなトラウトばかり求めるのか。しかもそんなにチャンスの多くないこの宮崎で。

自分でもまだ上手く言葉に出来ない。出来ても、軽々しく口にしたくないのかもしれない。

 

真実と現実、栄光と退廃、愛情と孤独、希望と誘惑。自分のことばかりじゃなくても、人生は複雑だ。が、ただ一つ、自分はむやみに群れる男は嫌いだ。幼いころからそうだった。オスとして産まれたからには自ら望んで孤独を求める時間がきっと必要だと信じる。

 

自分が惚れた道具をたずさえ、森羅万象に一人溶け込み、五感を研ぎ澄ませ、老かいで偏屈、かつ神経質な、それでいて限りなく美しい鱒との対話を求める。

 

鱒釣りはオトコノコが男でいられる数少ないサンクチェアリだ。そしてそれは簡単に答えをくれないが故に心のオアシス足り得るのだ。

 

虹鱒 アンサースプーン

 

この日はほどなくして結果が出た。40㎝に満たないそれほど大きくはないニジマスだが、来るべき早春賦を感じさせるうれしい1匹だった。

 

アンサースプーン

 

ヒットルアーはサトウオリジナルのアンサースプーン11g。ここのところ気に入って多用している。各地で結果を残している名品。低い気温と濁り気味の湖水に合わせてゴールドベースの蛍光カラーを使った。

 

フルキャストしてカウントダウンを20。中層をぐねぐねとしたやや速めのリトリーブで、おそらくはイレギュラーにバランスを崩したところで「ゴン」とバイトしてきた。

 

虹鱒 背中

 

活性はまだそれほど高くないのだろうか、体をくねらせるだけでそれほどファイトをせずに上がってきたニジマス。しかし、全身のヒレはどこもピンと張りつめ、このまま大きくなってくれることを思いながらリリースした。

 

虹鱒 リリース

 

御池には大きな流入河川がなく、レインボーが自然繁殖することはないと言われている。だからこそ、現実的には難しいのかもしれないが、キャッチ&リリースの徹底を釣り人たちには呼びかけたい。

 

それほど広くない湖、釣り殺してしまえばいなくなる。簡単な話しなのだ。

 

美しいレインボーは食べてしまうにはあまりにもったいない魚だと思う。

 

アンサースプーン サブマリナースプーン

 

もうすぐ3月になろうとしている。こみ上げてくる愉しみを毎日だましだまし心に押し込みながら過ごしている。不調だった去年のデータを糧として今年こそはビッグトラウトを狙いたい。

 

バッセル スプーン

 

それはリベンジではない。静かだが、重い願い。

 

トラウト 湖畔

 

きっと、少しだけ、心を高みへと連れていってくれる大事な出会い。

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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