もう遥か、20年くらい前だろうか。
私が独身のころ年に1度はGTを求めて、トカラ列島の宝島に通っていた時代。
運悪く、台風に遭遇してしまった、宿泊はビーチでのキャンプ生活だったため、優しい島の方に、「危ないからうちにおいでよ。」と声をかけていただいた。遠慮という言葉を知らない当時の私は、即、お言葉に甘えた。
なんと、お邪魔してびっくり、これまでにしとめたGTの尾が軒下にずらり、みたこともない、ポッパーに圧倒。
今はもう、ルアーフィッシング界の世界のカリスマとなられている、とある方であった。
何から、何まで面倒みていただき、私の命の恩人といっても過言ではない。
お世話になっている間、関西から来ている知人がいるので、お酒を飲もうと尋ねて行った際、その知人の友人もまた、海外から宝島に来ているとのことで同席していた。
私は宮崎から持参した、100年の孤独を提供し、名詞なんぞを配っていた。
そして、20数年後、娘の幼稚園の同級生の宴会を、親交えて我が家で開催中、釣りの話になって宝島の話が出たとき、関西から移住されているという方が、突然、「そういえば、私が宝島に行ってたとき、宮崎から来ていた、方に100年の孤独を飲ませてもらいました、会社の名詞ももらってたんですけど、名前忘れました・・」。私は腰が抜けそうにビックらこいて、「そりゃ、私ですよー!!!」。なんて、嘘のような本当の話があるもんなんで人生て面白いもんですね。
そんなこんなで、意気投合して、今ではちょくちょく、釣りに同行しているのである。
今回はそんな彼が、近場の川の上流部の桃源郷にお連れいたしますとのことで、7月の下旬に釣行した。
須木村を抜け果てしない林道の峠を超え、渓谷が見えたときの感動は、それまでの睡魔とロングドライブの疲れを吹き飛ばしてくれる。ダムインレットからの上流域はまさに「リバーランズ スルーイット」を彷彿させる絶景の様相である。対岸にかかる橋を渡り、準備を開始した。
山にかかった霧が薄っすらと明け、闘争心を掻きたたせてくれる。
入渓した場所近辺のポイントを探ってみたが反応はなく、我々はダムのインレットを目指した。
ダムのインレットに到着し、準備を開始していたところ、目前でとてつもないバイトが確認された。
まさにモンスターを連想させるような、破壊音である。
すかさず、スミスのピュアを付近にキャストし、ボトムを丁寧に何度も探ってみたが、反応はみられない。そして、上流部への釣り上がりを開始した。
絶好の流れ込みポイントを探っても、ヤマメの反応はみられず、こんな方がたまに冷やかしてくれるのみ。
全く反応がないため、少し上流域に車を走らせていると、鮎釣り師を見かけたので呼び止める。
今年は鮎もあまり良くないようである。
「ヤマメなら、もう少し上流がいいよ。」との助言を受け、少しばかり車を走らせつつ渓相を眺めながら昼食を頂き、少しばかり入渓した。
上流域では、ぽつぽつとヤマメの反応がみられ、漸く、友人のロッドを型の良いヤマメがしならせてくれる。
「ヤマメに会うことができたので、そろそろ引き上げますか。」
・・・桃源郷のモンスターは夢に崩れてしまった。
まあ、この素晴らしいフィールドに立てただけでも幸せなのかもしれない。
友人と語りながら林道を歩いていると、地元の漁師さんが話かけてくれる。毎年、40クラスは数匹網に掛かるらしいが、淵に潜んでいるため釣るのは無理らしい。
男はそこをなんとか誘い出して勝負するのである。
やはり、釣れない釣りにはロマンがある。
毎週の睡眠不足な釣行でとうとう病に倒れ、台風の影響もあって、こいつをつまみに執筆しております。