啓蟄

 

二十四節気(にじゅうしせっき)の一つに啓蟄(けいちつ)という区切りがある。

 

二十四節気とは、その昔、太陰暦を使っていた時代に、季節を表すために考え出されたもので、一年を二十四等分し、それぞれに名前が付けられ、意味がある。

 

渓流 苔

 

啓蟄は、冬ごもりしていた虫が春の暖かさを感じて、ゆっくり外に這い出てくる頃のことを指し、おおむね3月6日頃から始まって、3月21日頃からの「春分」の前まで続く。

 

渓流 山女

 

3月1日、渓流解禁。全国のアングラーが第二の正月を目指して各地のフィールドの駆け出していったことだと思う。このセレモニーが終わると、盛期までぼちぼちと、というのが毎年のペースだ。

 

渓流 青空

 

解禁の翌週。3月7日に毎年何回かは顔を出す渓流に行ってみた。始めはどんよりとした曇り空だったが、ほどなく抜けるような青空になった。

 

がしかし、解禁から攻められ続けたのか、気温の変化が激しいせいなのか、夜明けからしばらく全くのノーバイト、ノーチェイスの時間が続いた。

 

途中、上流まで上がって、川沿いを引き返してきた県外アングラーらしき2人組に出会う。

 

「おはようございます。どうでした?」
「いやー、全然。」
「やっぱりそうですか。この後、上流行きます?それとも下流?」
「上流に行きます。」
「じゃ、私は下流に。」

 

トラウト アングラー 後姿

 

大体この時期は朝一から好活性、という日は少ない。

 

あせる気持ちはなかった。今日はゆったりと。

 

渓流 流れ

 

やがて空気がぬくもりを帯びてくると、ヤマメたちの活性も上がってきた。

 

自分は渓流では、ミノーとスプーンを半々くらいで使う。水深の浅い瀬をアップストリームで狙うときはやはりミノーの方に分があると思うが、その他の場所ではスプーンのシルエットの小ささとフォールスピードの速さがミノーには出せない結果をもたらすことが多い。

 

例えば、淵への流れ込みのようなポイントで、ミノーのトゥウィッチングにチェイスはしてきたが、バイトにいたらないようなとき、3g前後のシルエットの小さいスプーンを流れの筋に乗せて、中層~低層をリフト&フォールしながらドリフトさせると、かなりの確率でバイトしてくる。ミノーでテンションが上がりきってしまったトラウトが小さな光の明滅に思わずアタックしてくるのだろう。まだ渓流スプーンを試したことのない人にはぜひ一度トライして欲しいメソッドの一つだ。

 

スプーン 山女 渓流

 

何より、渓流のスプーニングにはミノーでの釣りにはない趣があると思う。

 

ある程度やった人なら皆感じていると思うが、一部のミノーを除いて大抵のものにはトリプルフックが2本ついている。鋭利なフックポイントが合計6つも、ある。このせいで、不本意なフッキングで上がってくるヤマメを日に何回も目にすることになる。それでも、未だにミノーを使ってしまう自分がいるのはジレンマなのだけど。

 

実は、今でもヤマメ釣りで一番醍醐味が感じられるのは、柔らかいのべ竿でのエサ釣りだと思っている。ラインに全く遊びがない仕掛けでエサをナチュラルドリフトさせることに手先を集中させ、思ったとおりのポイントで、目印が「キュン」と引き込まれ、軽い衝撃に驚かされる感触はルアーやフライでは味わえない快感だ。

 

それでもルアーフィッシングが大好きだからやっているのだが、スプーンをリフト&フォールしながらドリフトさせることはかなりエサ釣りに近いと思う。

 

ふうわり、ふうわりとロッドを上下動させていると、ミノーで攻撃的にトゥイッチングさせているときと違って、渓流の穏やかな風とシンクロできるような気がしてくる。

 

渓流 アングラー 影

 

この日の水はまさしくジンクリア。日が高くなり、ヤマメの活性が上がってきた。自分はミノーをティーザー役にしてアップクロスで何回か叩いた後、クロスストリームのポジションでふうわり、ふうわりのスプーニングを愉しんで、最後のデザートのようにダウンクロスで流し込む釣りをそれぞれのポイントで繰り返した。

 

このやり方だと、一つのポイントに費やす時間がかなり長くなるのだが、その分色んな発見があって面白い。ルアーも数投ごとにとっかえひっかえして遊ぶ。

 

渓流 水中 山女

 

帰る間際までには威張れるようなサイズには出会えなかったけれど、8寸くらいのヤマメたちとは何度もたわむれることができた。

 

渓流 山女

 

やはり、山女魚という名前の魚には、出来るだけ優しく接してあげたいと思う。

 

釣りたい、釣りたい、をセーブすることがいつか出来るようになれば、少しは思い描くような格好いいアングラーになれるんだろうと思う。

 

渓流

 

ちらかってしまった心をきれいにして、

感じるままに、

子どもの頃の純粋さに戻れるように。

 

Life goes onとはそういうことなのかもしれない。

 

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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