”Killing Me Softly with His Song”
このタイトルに「やさしく歌って」という邦題を付けたのはつくづく大したセンスだと思う。
自分くらいの世代の方であれば、昔流れたネスカフェのCM、というのが一番思い出してもらえるだろう。
ロバータ・フラックという女性歌手が1971年にリリースし、大ヒットの末にグラミー賞を獲得したという名曲。
ただ、個人的には、春の穏やかな午後に華やかな香りを立てる紅茶のようにポップな原曲よりも、しんと冷えた冬の夜にスモーキーな薫りを放つウイスキーのようなジャズバージョンの方が好きだ。
エリック・アレキサンダー/Eric Alexander
>1968年、米国イリノイ州生まれ。6歳でピアノのレッスンを開始、クラリネット、アルトサックスを経て、高校卒業後にテナーサックスを始める。1991年に「セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション」で銀賞を獲得し、翌年N.Y.に移り発表した初リーダー・アルバム「Straight Up」で一躍注目を集める。以降、中堅実力派として第一線で活躍し続け、現在まで約80枚ものレコーディングを残す一方で積極的にツアーを行ない、「世界で最も多忙なジャズ・テナーサックス奏者」とも、テナーサックス・プレーヤー界の「バラッドの帝王」とも言われているという。
引用で恐縮なのだけれど、この人のKilling Me Softly with His Songが特に気に入っている。奇をてらわない保守本流のジャズだけれど、そこかしこに現代的な洗練を感じさせる名演だと思う。普段ジャズに触れる機会がない方もよければ聴いて欲しい。
朝夕の空気がだいぶ澄んできた。
木々の緑が紅く色づき、ウェーダーを履いて釣るのがちょうど良い。
そろそろレインボーとの出会いを求める季節になった。
昨年と違って、どうも今年は調子がいいようだ。
把握しているだけでも、友人が1日で2匹。フライの方が2匹。バスの方が1匹、それぞれランカーサイズのレインボーを上げている。
自分はここまで2回この湖を訪れた。1回バラシて、もう1回はフックアップしなかった。バイトの感触からいって、2回ともレインボーに間違いなかったと思う。
数投ごとにポイントを転々とするストリームの釣りと違って、今一つとらえどころのない湖の釣り。でもコツはある。確かにある。
チャンスは1日数回しかないかもしれないが、やはり結果は小さな偶然でなく、大きな必然から産まれてくるものだ。そのかけらはいくつかは見えていると思う。
この湖で一番好きな時間帯は午後2時から夕方にかけてだ。西日が湖面に銀色の影を落とす。風が起こすさざ波がプラチナ色を拡散させる。まるでイワシの巨大な群れが空を舞うようだ。この時だけは誰にも邪魔されたくない。1人で浸されていたい。
結局、所詮、人は皆見たいものしか見ないし、聴きたいことしか聴いちゃいないのだ。
逆説的だが、視野を広くする、大きな必然を理解するということはそんな本質を客観的に、冷静に見つめることから始まるのだと思う。正義とか、美とか、そんなものは人それぞれ違うのだと。そこから始めないといけない。
目の前にある正解、ひそやかに拡がる美しさ、それに気付いたような気がして、また逆戻りして、また進んだような気がして。
こんなことがこの釣りの真髄なんじゃないだろうか。
とりあえず当面の目標は、この人がだいぶ前に釣った74㎝を超えること。
これは間違いなく偶然だろうけど、湖でずっと使ってるこのロッドの長さも7フィート4インチ。多分75㎝を釣ったら、このロッドを卒業するんだろうなあ。
そしたら新しいロッドで、夢の80㎝オーバーを狙えるんだろうなあ。
全く漠然と、そんなことを考えている。
もしこんな夢想が大きな必然だったら、それはそれは。。。
”Killing Me”の意味を検索してみると、どうやらいい意味も悪い意味もあるらしい。
良い方は、「胸を締め付けられるような」や「メロメロになる」とかいう意味。
悪い方は「ひどく疲れた」や「ボロボロになる」という意味。
まぁ、結果はどっちでもいい。こんな風に追える何かがあること自体が幸せなのだろう。
今年もそろそろ、ぼちぼちと。