自然淘汰 (原種を求めてvol.2)

今 志高湖で子どもたちとキャンプをしながら
幕の中でコットに寝っ転がり
コラムを書いている

子どもたちが戻るまでの間
情熱 との話を進めていく
辺り一面 ヒグラシの声が響き渡る

「良くその状態でお仕事ができましたね。
奥歯が二本真っ二つに割れています。
歯軋りで歯が割れたのですね。これでは痛み止めも効きませんよ。」
まさか歯軋りで歯が割れるとは…

麻酔で垂れた しかめ面で 原種のエノハがいるであろうエリアを調べてみる
私が時折遊んでいる近場の川の あのメザシのような小さなエノハも在来というから驚きだ

原種のエノハといえば 俗世離れした源流奥深くというイメージだが
人が住むすぐ側にも 静かに在来エノハが棲んでいるという
snsを通じて在来エノハ調査の依頼者でもある「教授」と繋がることができた

地元の人ではない人間が 地元の人間に
地元の自然や人や街の歴史を まるでそこに生きてきたかのように話すのだ
本当に不思議でならない
それから地元の独特な環境で 在来エノハが残っているであろうエリアを選定し 通い詰める日々が始まった

「数年前まではここの水路で晩のツマミがてらにアマゴが釣れていた」

「大雨が降るとアマゴが下の淵から差してくる」
等々
しかしハエしか釣れない…恥ずかしい話時間を変えたり天候の違いを狙って通い込むが ハエしか釣れない

地元の協力者や教授からの情報が 毎回 調査に玉砕する自分の闘志に火を点ける
その度に 夢のような里川の美しい光景が目に浮かぶ

教授とのメールやり取りの一齣

「情報ありがとうございます
自分は地元の里山の自然が好きです
今回も釣れなかったけど
昔 地元の里川の 充ち満ちとした自然の中で
人の棲む すぐ側で美しいエノハが
田んぼの水路までいた という事が本当に嬉しく
今日も濁ったあの川の沢で目を閉じたら
昔 エノハと共存していた地元の里川の景色が映りました
その欠片でもよいので感じてみたいです」

「私も爺ちゃんやおばあちゃん達が
子供時代に騒ぎながら手づかみで取っていた学校裏の田んぼのそばの湧水での光景が目に浮かびました
生き残っていると信じたいし、どうすればまた復活させられるか考えたいです」

後日 10年以上も前に 私にトラウトを教えてくれた先輩と 在来調査のリベンジが決まる
その場所の雰囲気だけでも感じたいと 教授も駆けつけるという
しかも宮崎から夜な夜な強硬手段で
現地で野宿で待つという
夜明けに沢の近所で 私たちと待ち合わせる事になった

偶然にもこの沢は 大病で釣りが出来なくなった先輩が 私に託してくれた 思い入れのある沢
これが松本さんの言う 必然 なのか?
なんとも言えぬ 不思議な感覚は続いた

ベンツの四駆に全身シムスの紳士
それが勝手な教授のイメージだった
待ち合わせ場所に着くと すぐに教授が駆けつけてくれた
「初めまして!」
吸い込まれそうなくらいの満面の笑みに
私も先輩も完全に教授にペースを掴まれる

「さぁ行こう!」
誘うのか誘われるのか わからないなかで
高原の谷へ降りる獣道入り口で 準備途中に
一台の四駆が勢いよく停まった 運転席から降りて近づいてくる
ここで釣り人に会ったのは初めてである
これも必然か?

「リリースお願いしますよ!」
あまりにも剣幕な物言いに カチンとくるが
教授の手前 喧嘩するわけにはいかない

穏便に話をしながらその場を取りまとめようとしたその時
「お久しぶりです。元気にされてますか?」
教授の一声で相手は一転
「教授はここもやられてるのですか!?また来ます。お気をつけて。」
また物凄い勢いで四駆に飛び乗り私たちの前から消えてゆく

舌先を出し苦笑いから
大きくカッカッカッ!と笑う教授に
私たちは圧倒されてしまった

半分崖とも思える谷をおり 拓けたガラ場で遊びながら
水質や地質の状況など観察し私たちに説明してくれた
これだけ人に近い場所で 魚たちが生き残れるのは この湧水と人が安易に立ち入れられない地盤の緩さや外敵も寄り付かない程の川に覆い被せられている竹藪
本当に地元ならではの環境が魚たちを守ってきているのだ
我ながら自分の独特な自然環境に驚きをおぼえた

「しかし君はこんな所で一人で遊んでるのか?」
半分呆れ顔でカッカッカッ!と笑う教授につられて一同大笑い
川を登るに連れ 大雨となり淵ごえで教授は川に落ちたり 仲間も滑って転けるなど アクシデントが起こる
その都度ヒヤヒヤしながら脱渓場所までガイドを進めた

全身ずぶ濡れの途中休憩
教授が私たちに食事と珈琲をいれてくれるという
バーナーで湯を沸かしドリップまでしていただいて何とも恐縮
教授がいれてくれたフィルターのドリップ珈琲
フィルターが破れていた
そんな粉まみれの珈琲

教授がランチにお勧めの食材を準備してくれているという
魚肉ソーセージ
全身ずぶ濡れで疲労困憊の三人
教授は自分がいれた珈琲を一口
苦い!と唸り カッカッカッ!と笑う

同じずぶ濡れで横に座っていた先輩が
「教授は人を惹きつける力がある」
ボソッと言い 一同またまた大笑いの一服

やっとの事で脱渓
豪雨後ということもあり
心から安堵と疲労が全身に襲いかかる
「お疲れさん!帰りの時間まで後30分くらいある!次何処行く?」

驚愕だった
まさに「情熱の塊」
私もよくわからないが 何か凄く嬉しくなって

日が暮れるまでボロボロになるまで
地図を観ながら在来エノハがいるであろう川を探して回った
本当に強烈な一日だった
帰り途中 その事をコンビニの駐車場で
松本さんにメールを送った事を
今でも昨日の事のように覚えている

子どもたちがサイトに戻ってきた
今回はこの辺りで

~to be continued

モゲノ智則

モゲノ智則

投稿者プロフィール

生まれ:1978年
メインターゲット:トラウト シーバス 雷魚
メインフィールド:渓流 大小河川
-メッセージ-
何をするにもSteve McQueenならこうするであろうと妄想しながらアウトドアを愉しむスタイルです。別府市在住。

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