終わらない日々

 

思い付きを形にまで昇華できるのは、行動を土台に幸運が乗った時だと感じている。どちらが欠けても骨と皮あるいは内臓と肉だけで終わってしまい、命あるものになることはない。体験知に過ぎないが、大きく外してもいないだろう。

TailSwing、このサイトは好例だ。私の思い付きと行動に出会いという幸運が重なり、これまで歩いてこれた。その両輪の重要な位置に彼はいた。

ひとまわり先輩だが、悟りでも開いたかのような物言いにこれ以上ない子どもの部分、それこそが大切だと言わんばかりの発想とやり切る信念を支える行動力。いつまでも負けん気で、ゆるやかだがその中の芯から噴き上げる熱を隠し切れるほど大人でもない。飲んでは意味深な言葉で攻めてくる。が、しつこく正論で攻められると弱い、そうなれば強引に話を切りあげようとする。

東京に出るまで、単独以外ほとんどの釣り時間を共に過ごした。とてもここでは書けないような話も随分とした。
昔の私を知る数少ないひとりでもある。

エバ(メッキ)がトゥイッチで釣れるとは知らなかった。
宮崎の太陽が真夏に最盛期を迎えるその時、ぐるぐると海岸沿いを巡りながら堤防を彷徨い、吸い取るように飲み込んだ自販機のスポーツドリンク。灼熱の堤防に魚への想いも焦がれ、揺れていた。

烏賊が釣ってみたくなり、二人で餌木を買い込んだ。
情報を集めて夜中に行った南にある漁港、その体が表現する色彩の変化、透明度、ジェット噴射の重み、吐かれた墨跡。正解の興奮収まらずはしゃいで愉しんだ。美味しかった。その後しばらく渓流は夏前に終わり、共に海へ赴くのが行動パターンになった。

トラウトが宮崎で釣れるなんて知らなかった。
はじめての時はこれまたひどい場所、私の車は底を擦り、離合する場所もないような所に連れて行かれ後から合流した彼の弟と三人、乗り付けたジムニーの羨ましさったらなかった。素人の私にも沢山のヤマメが応えてくれた。その後同じ場所に行っても、結局あれほどヒットを重ねたことはなかった。他のどこへ行っても今のところ無いし途中で帰ってしまうだろうから、もう二度とないだろう。

釣り終わりはほとんど帰宅を約束した時間より遅かった。毎度家族へ平謝りの電話をした。

ニジマスがいるらしいと、釣り方もわからず二人で湖に通い詰めた。全く釣れなかったし情報もなかったが、数年かけてその確率を積み上げていった。

一眼レフを買ったと、自慢げに話してきた。聞いてもいない撮影のコツを聞かされた。

東京のメーカーを熱く語り始めた。世田谷世田谷と五月蠅いと思っていたが、気が付くと道具が増え、ウェアが揃い、理想に近づくよう徐々に試しながら洗練されていった。

仲間が増えていった。それぞれに自分の釣りを考えられる、他者と違っていいことを理解と尊重できる理想的な大人達だ。

なんだかんだ、お互いアップダウンはあるものの、それらも含めて輝くような時間は過ぎてゆく。

「嫌なんですよ、もう釣れるのは分かってますけど、体や目にフック掛けるなんて」
「スプーンだけなんて今時他にないじゃないですか。大人が読めるようなものもメディアにほとんどないでしょ、面白そうだと思うんですけど」

「いいんじゃない、それ出来たらちゃんと書くよ」
「格好つけて書いてくださいね」

最も多くの記事を書いてもらった。
有言実行が信条である。

「イベントやろうよ」
「そうですね、それもいいかもしれません」

毎年二人であーだこーだと悩んだ。
いつの間にかネットで見るだけだったメーカーから協賛をいただけたり、大御所に足を運んでもらえた。

性格はまったく違う、その二人が同じ景色、同じ魚、同じ匂い、数々の出来事をそれぞれが持つフィルターで濾し取り、文章にしてみた。

たくさんの人に協力をいただいた、その数十倍は協力を願い出た。こんな訳のわからないサイトに、我々の顔も知らないにも関わらず協力してくれた。二人して応えられるかと恩義の重圧を嘆いたこともあった。

全てに彼の存在はあった、確実に。

多分誰よりも彼の写真を撮ってきた。
互いに恥ずかしくなるような稚拙と滑稽、熱量、試行錯誤、その過程をサイトを通じて記録と記憶に留められてよかった。

結局のところ、また一緒に釣りへ行ったりバカ話をするのだから些細な変化なのだけれど。
何ら相談なし<自由(Liberty)>というのがいかにも彼らしい、少し驚いたがそれよりもにやりとしてしまった。

筆を置くだけなのだが、正直に言えば寂しい。

誰しも幸か不幸かは別にして、やんごとなきものは降って湧いてくるようになっている。
追うのか、追われるのか、乗るのか、降りるのか、彼の描く”自由”とやらをこれからも見ていこう。そしてまた私も見られているのだろう。

さてさて、終わらない日々を続けましょうか。どちらかが終わるまでは。

ありがとうございました。

藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

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渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
-メッセージ-
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