スプーニングを真似る渓

 

百年の孤独 トラウト

「ウマいですね。」

行きがけに寄ったコンビニで明日の食糧と水分、今夜の肴を買った後。2時間程度のドライブ、何を話したのだかさほど覚えていないのだけれど、覚えてないということは、いつもと変わらない有意義な会話だったのだろう。

宮崎県、約半年ぶりの釣行だ<漁港にスプーン>。前回は年明けの海に向かって鉄片を放り込んでいたが、今回はおなじみ松本大兄と、最近では大兄と一緒することが多いと聞く(少々不憫だが)村岡氏と共に、全員初めてとなる渓へ夜のうちに乗り付けて臨もうという算段である。

百年の孤独を注ぎ、明日があるからと飲み始めたのだが途中から気分もよくなって、冒頭のセリフを誰それと酒臭く吐きだす。もうこのまま起きて行こう!となってくる。

私、今日フライトしてきたんですけど~・・・まぁ、いいか。話も愉しいからそうしましょう!

アングラー 渓流 夜

スプーン ボックス

スプーンメインのタックルボックス。私自身はもう随分とスプーンしか投げてないので見慣れてしまったが、現代においては異様・異質なものに映るだろう。

ガチャガチャと探しながら、目当てを見つけては語らう。そんな夜が深けるのではなく、明けてゆく。

宮崎 渓流 スプーン

頭には一つの狙いがあった。大兄のいう<ネイティブ アップストリーム スプーニング>とやらを実践して見せてもらうということだ。もちろん学んだなら自分でやってみる腹積もりである。もっと言うなら使えると感じたなら盗もう、真似ようというコトだ。

そんな邪(よこしま)な考えを抱えて歩を進めるが、吹き飛ばすかのような盛夏の清涼な美に目を奪われて、カメラをごそごそと取り出していた。

朝霧と太陽光がせめぎ合いながら、露に濡れる草花を照らす。木々がつくりだす陰影と流れが反射させる光の明滅は、宮崎の渓のしなやかな強さを美しく際立たせ、自身がこの場にいるのだという満足感と景観の妙をまろやかに混ぜ合わせ、調和させていく。

「いいところですね。」

「そうだね。」

多くの言葉は不要である。その場所に共に立てばいい。それだけで繋がる何かをきっとお互いに感じ取るのだ。

宮崎 渓流 スプーン

車内と釣行直前で前段、教えてくれとの話は済ませてある。あとは後ろから、前から見て大兄が伝えてくる行動と言葉の断片を自身の脳内で拾い、繋げながら疑問も投げかけてみる。

およそ見ていれば、どこに投げて、どれだけ待って、どんなスピードで、どこを流してくるのか。これはわかるものだ。文章にすると長くなりそうだがあくまで私の目線で備忘録を兼ねて感じたことを書いておきたい。これが誰かのヒントや、大兄が書いてくれたコラム(現在は少し違うので後述する)の理解を深めて、実践してくれることになったなら幸いに思う。

スプーン ヤマメ リリース

いちいちネイティブアップストリームスプーニングと長々書くのも読むのもつらいので、Native Upstream Spooningの頭文字でNUSとして書く。余談ではあるが、英語のスラングでSpooningはスプーンを重ねた図から「男性が女性の背後から抱きつくようにして寝ることを言う」らしい。スプーニングという言葉を使うことに違和感があったのだが、少し好きになれそうではないか。(そちらに興味を覚えた皆様はすぐに英語にて検索されたし)

さて、NUSだがコラムを読むと”スプーンのドリフトをメインとして狙った泳層(深さ)を外さないようにロッドティップで上下(アクション)させながら、リトリーブを絡める”ように理解していたし、確認したところ外れもしていなかった。

が、大兄がやって見せた動作を見てすぐに”これは違う”ということに気付く。

ちょうどコラムにしている湖に近い<ネイティブ レイク スプーニング①(リトリーブ編)>やり方、すなわちリトリーブ主体、スプーンをアップに投げ”巻き”でコントロールしていた。正確に言えば、ポイントでやり方は変えているという感じである。曰く、サイズを狙って取るための試行錯誤の途中にあって、変化しているのが現在のようだ。

進化を続ける釣法を見て、新しい課題とそれを悶え愉しんで解決していく過程を感じた。これも堪らない醍醐味だろう。

ヤマメ スプーン パラゴン バイト

先行は村岡氏、次に大兄、最後に私の並びになっている。傍目で見つつも、攻められていない小場所へスプーンを滑り込ませる。小さいが、美しい宮崎のヤマメ達が素直な反応で遊んでくれる。アタックしてくれる場所や追いかける長さも随分と緩やかで、叩かれていないのか、これが普通なのか判断はできないが、嬉しいばかりだ。

深さのある流れに立木が入り込み、いかにもな雰囲気がある場所へ大兄がプレゼンテーション。見ながらも私はその間に1尾をヒットさせ、取り込みに入るため目を離して戻すと、良い感じに弧を描くパラゴンG(グラス)が網膜に飛び込んでくる。

「お、いいんじゃないですか!」

「そうだね。」

スプーン ヤマメ

もちろん投げ込んだ場所の違いはあるが、これだけの差がある。言葉や文字にするほどスプーンで”狙って”釣り上げる魚のサイズを上げることは容易いことではない。釣れる、その先に手を伸ばしつつある。

ヤマメ スプーン リリース

丁度公開された<甘美なるもの>で書いているが、簡単に言えばアップからでもスプーンの動きを可能な限り止めない、ということに尽きるだろう。そのためにロッドでアクションを加えるのではなく、巻きによって、左右へのウォブやロールを続けさせる。ここぞ、という時に軽くロッドで微細な変化を出す程度である。

どうも似たような釣りを見たことがあると思ったら、管理釣り場での村田基氏の動画そっくりであった。大兄もその昔、関東在住のころは随分と管理釣り場で鍛えたものらしいから、得た何かが結実したのだろうかと思いを巡らせてみる。

しかし、アップでスプーンを動かし続けるのは難しい。特にアップクロスでキャストした際などは横からの水流を受けるため、想定したトレースコース、レンジのコントロールができない可能性が高い。そのため直アップに近いポジションに立つか、もしくはロッドの長さでトレースコースを直アップに近づけることが必要になる。

渓流では長めに入る6フィートクラスやそれ以上のロッドを使う大きな理由はここにある。長さがあれば、リトリーブ中にティップを上下させることでショートロッドよりもレンジコントロールを容易にし、左右に傾けることにより柔軟に流れに合わせてトレースコースを変化させることが出来るのだ。これがミノーであれば誘い動かしながら流れを切り裂くことができる、しかしスプーンの場合は強引に抵抗を与えると回転してしまうこともあるため、ソフトに導くことが肝要となる。

直アップであれば水流は後ろから流れてくる、もちろんそれでも障害物や様々な要素により常に一定とは限らないが、出来る限りの横影響を避けて、スプーンが自然に泳いでくれるように配慮すること。これが現在のNUSの最も重要な要素であると思う。

スプーン アングラー 渓流

余談ではあるが、強い水流でのアップクロスでスプーンを同じようにきっちり泳がせようとすると、驚くようなスピードで巻き上げなければならない。もちろん釣れなくもないが、レンジも上がり、スピードも増すためか釣果は雲泥の差である。そしてなぜか見切られる、不自然なのだろうか?

Father’s day fishing>この時は手前まで猛烈なスピードでアタックしそうになっていた魚がいたが、結局釣れることはなかったし、その後フォローでミノーを使った関根氏によいサイズがヒットしている。

宮崎 渓流 木漏れ日

現在の結論として、NUSには2つの釣り方が今はあると勝手に考えている

 

1.<ネイティブ アップストリーム スプーニング>の釣法。緩やかな流れを軽いスプーンでトレース(ドリフト)しながら、チョンチョンとアクションを加える。

通常の巻きでスプーンを使っている方は是非トライしてみて引き出しを増やして欲しい、サイズはともかく数はでる。岩など障害物の多い、浅めの渓相などにピッタリだと思う。2.5g程度のハスルアーがお勧めである。

 

2.このコラムで書いている釣法。直アップを意識してスプーンを巻きで泳がせる。

こちらのほうがサイズは良い事が多い、ボトムより少し上、岩などに当てないようにコントロールしてみてもらいたい。アップ引きのため、水をよく掴んでくれるスプーン、カップの深いHOBOスプーンやカットが入ったもの、ハンマードのものをお勧めする。

 

どちらも、スプーンにありがちな”釣れた”感ではなく、”釣った”が強まるはずで、スプーニングがまた愉しいものとなるだろう。

エキスパート達がやるようなU字のピンで喰わせる、ということは経験や読みなど複数の要素を結びつけ、実行しなくてはならないため難易度が高い(だからこその喜びと愉しみがある)。比べればこのNUSはある程度練習してしまえば誰にでも可能なスプーン釣法のひとつになると感じている。

アングラー 渓流

さて、当日の釣りに戻ると、話を聞きながら巻きのNUSに取り組んで、よいサイズを若干の緊張と、してやったり顔でヒットさせたものの、案の定バラしてしまった。いつもの感覚のまま大兄が借してくれたBITEに太めのチヌ針、フッキングが甘かったのだろう。

いつでも、まだまだである。

そう思わせてくれるフィールドと仲間に感謝したい。

 

藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

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渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
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