幕が上がった

 

「しまったなぁ」

時刻は8時過ぎ、2017年僕の解禁初日。九州山地のとある村のとある川辺で僕は頭を抱えていた。

実績のある本流ポイントで解禁初日に尺山女魚を釣ってやろうと目論んでいたものの、昨年秋の大雨による影響か、目当ての淵はどこも土砂で埋まり魚影が全くない。

とりあえず一服しよう。これから一日どうするか考えようと煙草に火を点けた。

 

僕がトラウトフィッシングに出逢ったのは3年前。

仕事で付き合いのあったtailswingコラムニスト松本さんから、トラウトフィッシングの魅力や、このtailswingを立ち上げるという話をちょこちょこと聞いていた。

一回り以上離れたオジサン(ゴメンナサイ!)がキラキラと目を輝かせながら楽しそうに話すものだから、バスや磯のフカセ釣りをしてきた釣り好きの僕の好奇心が湧かないはずがない。松本さんから何を揃えたらいいか、どうやったら釣れるのかを聞き僕はトラウトフィッシングを初めてみた。

数回目の釣行で35cmの山女魚を釣りあげ、その秋には御池でニジマスを釣ってしまった。

しかし、何より非日常的な山の景色、こんなきれいな魚がいるのか、と魅了された。僕はアッと今にトラウトフィッシングの虜になったのだった。

今年は4シーズン目。昨年は満足いく釣果に恵まれなかっただけに余計に良いスタートダッシュを切りたかった。

「よし、渓流に行こう」

煙草を携帯灰皿に仕舞い、そう声に出した。本流は無理だ、尺山女魚は仕方ないにしても、兎に角、山女魚に逢いたい。でも、近くの渓流ではどこも先行者でごった返しているに違いない。だったら誰も行かないような山奥に行こうじゃないか。

意を決し、僕は空により近いハイランドを目指すことにした。

山々 渓流

一時間近いドライブの末、着いたのはかなりの上流部。たぶんあと2~3kmもなく源流だろうという場所。果たして山女魚の姿は見ることができるだろうか、期待と不安が入り混じりながら準備をする。

スプーンはスカジットデザイン、Priスプーンを結ぶ。カラー、サイズ感、愛嬌のある見た目が気に入って使っている。

斜面を下り川に近づく。足跡は...よし、鹿の足跡しかない。

だが、目の前に見えるあまりにも細く浅い流れに

「これはだめかも」

と少し弱気になる。しかし、せっかくロングドライブしてきたのだからと気を取り直して竿を振ることにした。

案の定一尾のチェイスもないまま大場所(といっても小さな小さな淵だが)が見えてきた。身を屈め、忍び足で近づく。岩の陰からフリップキャスト。よし、着水音も最小限に抑えることができた。カーディナルのハンドルをゆっくりと回す。

心の中で「居てくれ、居たら来い...」と祈る。殺気まるだしだ。

ギラッ

と水中が光る。

「キタッ!」

思わず声に出し、高鳴る気持ちを抑えきれず水際へ近寄る。0.6号のナイロンリーダーに合わせてセッティングしたドラグが少しだけ鳴く。水中でギラギラとローリングするのは五か月ぶりの山女魚。

確実に、冷静にと心を落ち着かせながらのランディング。

山女魚 プリスプーン 渓流

サイズこそ7寸程だったが、不揃いなパーマークを彩るサビの残った美しい山女魚。この時期だからこそ見ることができる体色。

一人山の中でニヤニヤしてしまう。

山女魚 プリスプーン 渓流

この谷ではこの一尾と、新子のちび山女魚数尾。とはいえ、解禁初日になかなか美しい山女魚に出逢うことができた。今シーズンの初釣行としては満足だと思いかけ、ふと、腕時計に目を落とすとまだ正午を過ぎたばかり。

まだ、時間に余裕があるなと思うと同時に、ムクムクと湧いてくる釣り師の欲望。

僕はそこから数十キロの移動を決意した。

雛人形

途中観光施設で休憩したりしながら、昨夏にチェックしていたポイントへ。同じ水系なのに水量は意外にも、ある。

「これはいいかもしれない」

期待に胸を膨らませ、タックルハウスのタックルスプーン3gを結ぶ。

笹の葉の様な細身のシルエットがベイトっぽく、また、キラッキラの輝きが山女魚に効くと思っている。

アップクロスにキャストし、少し沈ませて中層をトレース。そして、丁度えぐれの辺りでターンさせるイメージ。本当にそうアクションしているかは定かでない。きちんとターンと表現できるアクションかできているかどうか、でも、そういうイメージ。

数投目、えぐれにさしかかったところでジージーと巻くハンドルが、「ガッ」という手ごたえとともに止まる。

「ぃよし!」

またも独り言が出てしまう。自分自身への可笑しさか、ヒットしたことへのうれしさか、フフっと鼻息が漏れる。

しっかりとフッキングし、グリングリンとローリングを繰り返して抗う山女魚をいなし、無事ランディング。

山女魚 渓流 スプーン

ジャスト8寸。ヌメっとした魚体、美しいパーマーク。下手ながらもカメラのシャッターをパシャパシャときる。

「ありがとうね」と声をかけながらリリース。

シーズン終盤まで生き残って、また逢ってほしいな。

山女魚 渓流 スプーン

その後、もう一尾をキャッチしてタイムアップ。

解禁での尺山女魚こそならなかったけれど、美しい山女魚達に出逢え、久しぶりに山の空気も吸うことができ、上々の滑り出しだったかな、なんて思える釣行だった。

来週はどこの湖に、どの渓に行こうかなと考えるのが楽しい季節の始まり。

夢の大虹鱒、尺山女魚、美しい一尾を求め、僕は今シーズンを思いっきり楽しんでいきたい。

渓流 スプーン 渓相

 

村岡佑樹

村岡佑樹

投稿者プロフィール

メインターゲット:トラウト
メインフィールド:渓流、湖
メッセージ
南九州でトラウトを追うひよっこアングラー。
いつかダンディーな釣り師になることを目指し日々奮闘中。
米国ワシントン州に留学中、トラウトフィッシングに出逢っていなかったことが人生最大の後悔。

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