盆の時間

2018盛夏

お盆といえば世間はすっかり休みだが、私は”人が働くときに休む”趣向なのできっちりと働いて、その後休む予定だ。
とはいえ子どもも夏休みを迎え、実家に帰省するため家族は遠くに行ってしまった。

この機を逃すまいと普段できない釣り泊をしようと思い立つ。さらに言うなら帰りの時間を気にしないでよい釣行、なんたる甘美な響きであろうか。気を使う相手はおらず、漂うままに時を過ごせると・・・。口の端から涎がでそうな夢の時間を叶えるべく、右指からそそくさと仲間へ連絡を放つ。

釣りに行くのだが、時間の制約が緩い分いつも以上に”釣り欲”はない。気の向くまま様々な水辺を眺め、そこにいるであろう魚達へ魚種を問わずにスプーンを投げ込んでみたいと考えていた。釣れる釣れないというのは大きな要素だが、”頑固すぎる”と評される私の釣りは我儘極まりなく以下の一点にある。

私の釣りに付き合ってくれる魚に会いに行く

これだ。魚に合わせない(とは言え少しは考えているつもりなのだが)釣りをする以上、釣果などというものはある程度優先度を下げている。最上段にあるのは”どんな釣りをしたいか”ということであり、私にとって結果とは”それ”ができたかどうか。これで満足や納得が生まれるのだからしょうがない。

誰かに言われ教わった釣りで釣れたところで、したい釣りでなければ満足ならない偏屈者である。
同行者に横でバンバン釣られたとしても私と同じ釣り方でない限りは祝福とスプーンを躍らせる参考にするだけで、昔と違い特に何かを感じることもなくなった。

諸先輩方の好意から勧められたりすれば無下にもできず、釣れたならもちろん嬉しいのだが、その後に去来する”これじゃない”感覚にチクチクと前から後ろからと刺されて悶えるのがいつものオチなのだ。

偶然にも別の釣行がキャンセルされた関根氏と同行することになった。なかなか理解されない緩みきったプランだが、いつも通り
「ま、適当にやりましょう」
との心強い返事をもらう。言葉の背景まで察してもらえるのは有難い。

開始はイワナとヤマメでも釣りましょう、とのことで氏お気に入りの渓流(山)へと足を運ぶ。深夜からお宅へ邪魔をし、車でもバカ話をした結果、私は助手席で睡魔に戦わずして敗北を喫し、到着したのちに氏も水量が多いと寝入る始末。さてそろそろかと時間も気にせず起き上がり覗き込む。ここ数日にかけてそこそこの雨が降っており、改めて水量を見ると釣りにはなるが・・・さてどうだろうか?二人顔を見合わせる。

「とりあえず・・・ね」
「とりあえず・・・ですね」

開始しばらくは反応すら見えず、やっぱり・・・という気分で上がっていったのだが。


お互いにキャッチすることができた。
この場所で私の初物である、差し出された右手を強く握り返す。

さらにヤマメを追加、この時点で2魚種である。なかなか良いスタートを切れたものだ。

反応はもうなさそうだと見切りをつけ、次なるはバス。それもラージマウスでスモールではない。宮崎にまだいる頃、元々はラージマウスバスが釣りたくてルアーをはじめた。御池ニジマス狙いの外道としては釣りあげているが、狙って釣ることはなくなっていたのでいつぶりだろうか。少なくとも10年は遥かに超えているはずだ。

スプーンで狙っていると、その間に氏がキャッチを重ねる。この場所では見たことないというサイズまで。
いつも通りなるほど・・・とスプーンアクションの参考にしてみるが1バイトだけで釣れない。見かねた氏がグラブを勧めてきた、うーん・・・オフセットフックも懐かしいけど・・・ま、やってみましょ。

はい、いいサイズのブルーギルでした。
その後すぐにラージマウスもキャッチ、まじまじと懐かしさに眺めてみたがやはり愛嬌のある目だ。小さければ可愛らしく、大きければ荒々しい風格に魅了される。まさにゲームフィッシュだと愛でて、いいものだなと感じ入る。

その後はトップにてダブルヒット、なんだかんだで4魚種、調子のいいものである。
嬉しさにほころぶ顔、その裏側にやっぱりまたチクチクしてくるものがある。

カエシがあると、傷広げちゃうなぁ。とかテールフックが体にちょっと刺さっちゃった・・・。
悪いことしてしまったな、と。

しかし、背反するように久しぶりの感触から学べることも多い。泳がせ方、合わせ方、ラインの動きを見て魚と会話する。
その多くの情報がまた、自分の釣りへの示唆をくれるため、ぐぬぬと刺されるままにフィールドで考え込んでしまう。確かめるために投げ込んでしまう。

矛盾の中で、きっと顔は笑っていたことだろう。

その後、幻想的な流れを見ながらスモールを狙ってみたが、こちらはベイトフィッシュに対しての激しいチェイスを見たのみで音沙汰なし、流れる音を聞きながら満足感だけが高まっていくのは、既に十分魚に対して満足していることを教えてくれる。

暗くなるまで遊んだら、近くの温泉を探して入浴。
体をゆるりとくるんだ湯へ向けて、不要なものが染み出しては流れていく。油断のままこの身も溶けて少し減っているんじゃないかと思わされて気を持ち直す、それぐらいの幸福である。

とてもじゃないが若い時分には考えられなかった行動。
愉しみは増えるものだなぁ、と融解ぎりぎりの脳がありきたりな言葉を引っ張ってくる。

明日の釣りはもとより、思いつくまま途切れない会話が夜を深めていく。

まだこの旅は終わらない。

 

藤井政幸

藤井政幸TailSwing運営代表

投稿者プロフィール

渓流~海までどこでもスプーンを投げる。
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