Happy ~○ミは細部に宿る~

 

HOBO SPOON ホーボースプーン

色んな川の色んな現場をくぐり抜けて、くすんだ渋みを増したスプーンもいいけれど、ほんの少しコンパウンドを付けて磨いてあげると、封を切る前の輝きを取り戻す。

HOBO SPOON ホーボースプーン

小さなスプーンには綿棒で、大きなスプーンはティッシュでいい。
息を殺して、目を細めてこする。秋の夜長の愉しみにはもってこいだ。

ところで、ものづくりの分野なんかでよく言われることの一つに、「神は細部に宿る」というものがある。

何でもきっとそうなのだろうけど、全体を俯瞰しながらもディテールを凝視し、一つ一つを積み上げていく。この上下動を繰り返していく内に、色んなことが気になってくる。気になって気になってたまらなくなって、悩みに悩む。

こんなことを繰り返していると、ふと突き抜けて、開ける瞬間が訪れる。これが「宿る」ということなのだろう。

スプーン トラウト

スプーンだってきっとそうだ。作った人は皆さんそれを生業にしていらっしゃる方々で、そのブランクにはそれぞれ大変な意匠が凝らされている。
自分たちにできるのは、これと思ったものの力を信じて、最大限使いきることだろう。

ただ、我々アマチュアアングラーにも実際泳がせる前に出来ることもある。
何せスプーン自体のパーツはブランク1枚だけなのだ。他の小物を工夫するだけでも随分色々と変わってくることも多い。

スイベル スプーン

その一つにローリングスイベルがある。

よくオールドのスプーンにデフォルトの状態で付いているアレだ。

ローリングするスイベルだから、きっと回転運動が増幅されるんだろうな、くらいの想像はしていたけれど、そのことがどんなアクションに繋がって、どんな効果があるのか、ということについてまでは想像が及ばなかった。

スプーン 目 バイト ホーボー

スプーン ヤマメ バイト

普段渓流ではスナップのみのセッティングでやっている。

アンサースプーン

ニジマス スプーン レイク

湖ではほとんどスイベルを付けたセッティングで釣りをしている。

何でそんな風にしたかあまり意識もしていこなかったが、スイベルなしで「ブルブル・・・。」と泳ぐのは渓流のアップストリームに向いていると感じていたし、スイベルを付けて「シュルシュル(ヌルヌル)・・・。」と泳ぐ感じは湖の雰囲気だし、レンジキープもしやすい。逆に言うとそれくらいの認識しかなかった。

ある日、動画を撮ってみた。実際のシチュエーションに近づけるため、渓流の上流部のボトムから下流に向かってリトリーブしながらやってみた。
ほんの5メートルくらいの距離だったが、思っていた以上の違いにちょっと驚いた。

まずは、スナップのみ。大体の予想通りパタパタ、ヒラヒラと泳ぎ、たまにイレギュラーなアクションを見せる。

次に同じルアー、同じセッティングでスイベルを付けて引いてみた。リトリーブしているときには何とも思わなかったが、動画を再生してみて、「オッ!」と思った。

渓流と湖、それぞれで泳ぐベイトフィッシュの泳ぐ姿を思い出した。

渓流ではヤマメなんかもそうだけど、上流に頭を向けてエサを待つことが多い魚たちは一定の場所に定位しながらも流れに揉まれたり、水面のエサを見つけて飛びかかったりして、不規則な上下動をすることが多い。

逆に湖の小魚はストレートに、小さな身体をまっすぐにしたまま、ほんのわずか震わせながら泳いでいる。

そして、撮った動画にはこの違いが現れていた。
スイベルを付けない時に比べて、付けた時はパッと見、アクションはおとなしめになっているが、よく見ると細かなバイブレーションが連続して起こっている。
これは湖のベイトフィッシュの泳ぎにそっくりだ。見た瞬間そう思った。

ローリングアクションというとまるでスピナーのようにくるくる回る回転運動に捉えられるかもしれないし、またそれも事実だろう。

しかしその姿を横または斜めから見ると、「ビビビビ・・・。」とボディを震わせる動きだ。小魚がまっすぐに泳ぐ動きだ。

スイベルなしだとアクションは派手になり、アピールが増す。反面、浮き上がりやすくなり、レンジキープさせるにはリーリングスピードで調整しなければならない。

スイベルを付けると、アクションはバイブレーション主体になり、ナチュラルなものになる。回転運動が水を逃がし、浮力が減るのでレンジキープはしやすくなるが、手元に伝わる振動が少ないのでよく注意していないと思い描くアクションが出ているかどうか分からなくなりがちである。

こんなことを考えた後に改めて色んなスプーンを眺めてみる。

トビー スプーン

トビーやクロコダイルにはスイベルが付いている。

なるほど。もしかしたらこいつらは作った人がバイブレーション主体のアクションで使って欲しいという想いを込めていたのかもしれない。しかし、現代的なスライドアクションのように完全に回転させる使い方もあるなあ。もしかしたらスイベルはフォールアクションを意識して付けられたのかな。

クロコダイル スプーン

逆にエヴァンスのロコルアーやブルーフォックスのピクシーにはスイベルはおろかスプリットリングすら付いていない。これはきっとローリングアクションとは対局の振り切ったウォブリングアクションでブリンブリン泳がせて欲しいという意味なんだろうな。

などと、ほんの小さな、おそらくは1個数円しかしないようなローリングスイベルで自分はたくさん感じ、考え、少しだけ幸せになれた。

・・・・・・・・・・・・・・

細部に宿るミの字はカミだけとは限らない。

タノシミ、ウマミ、キワミ、タカミ。そして人生にはいつもちょっとのカナシミ。

少しおかしいのかもしれないけれど、自分の心は常にまるで線香花火のように散華する狂気と、冷え切った沼底の泥のような陰気。この2つの間を行き来している。

しかし、1人、釣具と戯れていると少しの間、心が中庸に定位するように感じられる。とてもあやういバランスながらも停止してくれる。

孔子の有名な格言に、「四十にして惑わず。」というものがあるが自分はまだまだとてもそんな心境にはなれそうにもない。ただ、釣りをし、釣りのことを深く考えるていると少しだけ分かることがある。

それは、「惑うことに惑わされない。」そんなことだ。

振り子時計の振り子が左右に揺れながら時を刻むように、人の心は時とともに移ろいを刻む。高名な哲学者や歴史に残る宗教家のように悟りを得るような心境はおそらく自分のような凡人には到底無理だろう。ただ、釣りのことをこんな風に考えてる時間は、まるで振り子が止まったような感覚に満たされることがある。

そんな瞬間を与えてくれる釣りというタシナミは、やはり男の人生を彩るのにあまりあるものだと思う。

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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