MasterAngler

 

MasterAngler プロト

「マスターアングラー。ビギナーからビジョンを定めてアングラーになり、マスターアングラーとなる頃にはその釣師としての終焉を迎える。忠さんそのものがマスターアングラーだよね。きっと。」

とある友人が語った言葉だ。
ここまで実に色々な釣りを経験してきた彼だから言えるセリフだった。

MasterAngler プロト

平成29年1月7日。この日のためにアートフィッシングの小田社長に贈っていただいた2枚の薄いスプーンを眺める。
まだ常見 忠さんがご存命の頃、小田さんが常見さん宅に行ってもらったプロトモデル20枚程の内の2枚とのこと。MasterAnglerの文字の前にSHIMANOのロゴがある。

「忠さんスプーン」がシマノから発売され始めたのは1982年らしいから、きっとそれ以前のものだろう。常見さんの自宅にあったということはご本人がその手に取った可能性も高い。ブランク自体は0.8mmとかなり薄く、トローリングメインのものだろうが、市販品ではなく、大変貴重なものだ。

常見忠 アートフィッシング

何にせよ、大変なものをいただいてしまった。とにかく調べれば調べるほど、常見さんと「忠さんスプーン」シリーズを信望している人たちが多いことに驚かされる。

特にルアーメーカーの社長さんたちがその中に多くいることが「忠さんスプーン」の図抜けた何かを示しているのだろう。史実として、国産ルアーはこのシリーズから始まり、平成の現代まで限りない数の枝葉を茂らせてきたのだ。

TailSwingの管理人、藤井くんと話して、このスプーンは特別賞として大会当日に御池で60オーバーのレインボーを釣った人にさしあげることにした。

限りなく、天文学的に、難しいハードルだ。多分、そんなことはしばらく起こらないだろうが、その時が来るまでこのスプーンは我々の精神的支柱にさせていただく。

Anglo ワレット 

一位(大物賞)の賞品は前回大会に引き続いてAnglo&Companyのレザーワレット。昨年は当時まだ発売前にも関わらず、とてもシックなブラウンのをいただいた。今年はその黒バージョン。
我々もショップに時折顔を出させていただいているが、まさしく江戸前の粋と西洋のジェントルマンシップを精妙にブレンドし、抽出したような洗練を感じさせてくれる。

個人的にも、あの雰囲気を御池に持ってきたいと思っている素晴らしいメーカーだ。
世田谷の風をこの聖地に、だ。

MACALLAN 開高健

二位の賞品は開高さんが愛飲したというシングルモルトウイスキー、マッカランの12年物。賞品を並べ、ポスターを貼り、参加者を待った。

御池 40年 雑誌

参加者が揃って、さあスタートフィッシングというとき、1人の方が車からある雑誌を持ってきた。ゆうに40年以上前に発刊されたという「見直したい釣り場・新しい釣り場」というタイトル。その中にこの湖に関する記事があった。

よくまあ、そんな長い年月なくさずに取っておかれたものだと感心するが、さらに、その人曰く、
「この頃は、でっかいレインボーがいる湖といえば中禅寺湖(栃木県)かこの御池だったんだよ。そんな時代があったんだよ。」

御池 雑誌 レインボー

「俺が知る限り、この時期ここで釣れた一番大きいレインボーは98㎝。おそらく日本記録だろうね。」
と。

記事の中の巨大かつ龍神のような威厳を持ったレインボーの写真と相まって、心臓をわしづかみにされたようになり、言葉を失う。西の聖地は、その昔、確かにここにあったという事実が不思議な幸福感となってひたひたと押し寄せてきた。

バイト 忠さんのスプーン アートフィッシング

大会ルールは、アートフィッシングよりいただいたバイト、ノーザンバイト、そして新製品のシェルバイトを1人あたり4枚、スタート時に配布し、釣果を競うというもの。もし根がかりなどで全ロストしたらそこでゲームオーバーだ。フックも通常のシングルフック以外に、新製品のハリーバイト(写真中央白いスプーンに付いているもの)という美しいループフックまで付けていただいた。

御池 アングラー

冒頭の友人の言葉ではないが、やはり、アングラーにはその技量・度量に応じたヒエラルキーがあると思う。

ビギナーから始まって、何年かかけてベテランアングラーなる。

そこからまた、経験を重ねて直感的な判断ができ、普通の人が捉えることが出来ないわずかなサインを森羅万象からキャッチして、多くの結果を残せるようになると、エキスパートアングラーと言えるだろう。

マスターアングラーとは、そのまだまだ先なのだろう。技量的にも、人格的にも、自分にはまだ見えぬ境地だ。

御池 アングラー

魚釣りはなんだかんだ言って釣ってナンボである。これは間違いない。釣って釣って釣りまくる内に、経験値が上がり、スキルが上がり、色々なことに気付き、技量・度量が増し、やがて人格的な面にまで良い影響を及ぼしてくる。

魚をたくさん釣ることができないで、アングラーとしての哲学を修めることは出来ない。

御池 アングラー

この日は我々に混じって文字通りのエキスパートアングラーが2人参加してくれた。離島の防波堤からのGT、北海道のワイルドレインボー、サーフからの大ニベ、どれもを黎明期からチャレンジしてこられたパイオニアだ。
この日この時に来てくれたことだけでも、とても嬉しいことだった。

が、

この日の御池は完全なる沈黙状態だった。
ビギナー、ベテラン、エキスパートの関係なくノーフィッシュ。
かすかなバイト数回、1回のバラシを除いて、10人近くいたアングラー全員のロッドには何のシグナルもなかった。

御池 アングラー

後日、古老の釣り師によると、ここは急激な減水が起きるとこのように釣れなくなることがあるらしい。そしてこの日、水位が比較的安定している御池は、その前の週と比べると1m近くショアラインが後退していた。
いつもはうっとおしいくらい釣れるハスも、日に数匹は遊んでくれるバスも皆無だった。それどころか岸沿いにいつもわらわらサスペンドしているベイトフィッシュもいない。

唯一、いつもより多くのランカーバスが我々を睨みつけるようにゆっくりと足元を回遊していった。もちろんバイトなどすることなどなく、顔を動かしただけで、悠然とその姿を消していく。

バイト 忠さんのスプーン

まあ、これも魚釣りだ。
個人的にも時間いっぱいまで集中して頑張ったが、ダメだった。
パーフェクトな敗北だった。

いただいた賞品は次回大会までキャリーオーバーとさせていただきたいと思う。

御池 ゴミ

終了後、参加者で行ったゴミ拾いでは、明らかに釣り人が残したものが多数あった。

御池 釣り ゴミ

ラインは鳥に絡まりその命を奪い、水中のワームはレインボーやバスが食べてその胃袋を破壊し、残ったサビキの仕掛けはさらなる根掛かりを産む。ジグヘッド、煙草の吸い殻、ペットボトル、空き缶、弁当の殻、、、開高さんがその昔嘆いた銀山湖の惨状は、ここでも見られる。最低限のマナーすら守れないようでは、もはやアングラー、釣り師という言葉をあてはめることすら出来ない。

スプーン イベント TailSwing

全てが終わった。また、来年だ。マッカランの12年物は13年目の眠りに入り、アングロのワレットにはときどきオイルを塗っておこうと思う。また、夢を求めて通ういつもの日々が始まる。

アートフィッシング パンフレット

40年以上前に産声を上げた国産ルアーの開祖と、同じく40年以上前にはあの中禅寺湖と並び称されたというこの湖。

MasterAngler プロト

もう一度書く。大会当日に60アップのレインボーを釣った人にこのMaster Anglerは贈呈する。

MasterAngler プロト

現代において、この湖でそのサイズを釣ることができるアングラーはきっとこの称号にふさわしい人物だろうから。

 

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終わりに、2回目となるこの大会開催に際して、快く協賛いただいた、

・Art fishing 小田 様
HP https://www.artfishing.co.jp/

・Anglo&company 菅沼 様
HP http://www.anglo.jp/

・SATO ORIGINAL   佐藤 様
HP http://www.sato-org.net/

管理人ともども、厚く感謝申し上げるとともに、今後貴社の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。

そして、先人たちにも。ありがとうございました。

 

松本 宏人

松本 宏人

投稿者プロフィール

生まれ:1970年
メインターゲット:トラウト
メインフィールド:湖
-メッセージ-
幼少の頃から様々なルアーフィッシングに親しむ。
物をなくすのは、単にだらしないだけではないかとの噂も。
宮崎市在住。

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